知育ノート

赤ちゃん、幼児、子供の力を伸ばす知育、知育玩具、関わり方やそれらに関する知識を紹介しています。

認知的不協和とは?認知的不協和理論の具体例はタバコとイソップ?

人は、「自分の考え方や行動」と矛盾する「新しい事実」に出くわすと、不快感を抱きます。

そして、不快な状態から逃れるために、「自分の考え方や行動」を改めるか「新しい事実」を否定することで、矛盾を解消しようとします。

例えば、喫煙者が「タバコが健康に悪い」という研究結果(事実)を突き付けられると、禁煙するか(行動を改める)、「タバコを吸っていても長生きする人はいる。」などと正当化してタバコを吸い続ける(事実を否定する)ことが挙げられます。

こうした、「自分の考え方や行動」と「新しい事実」が矛盾した状態、もしくは、そこで生じる不快な状態が認知的不協和です。

認知的不協和は、日常生活のあらゆる場面で起こりうるもので、子供の友人関係や学習においても問題になることがあります。

この記事では、認知的不協和(認知的不協和理論)の概要と具体例について紹介します。

認知的不協和とは(認知的不協和理論とは)

認知的不協和とは、自分の中で矛盾した認知を抱いた状態、もしくは、矛盾した認知を抱いて不快感を抱えた状態のことです。

英語では「cognitive dissonance」と表記し、日本では認知的不協和と訳されます。

アメリカの社会心理学者レオン・フェスティンガー(Leon Festinger)が提唱したもので、心理学の教科書に認知的不協和もしくは認知的不協和理論として紹介されています。

フェスティンガーは、①人は認知的不協和の状態を解消するために、矛盾があるものの一方の要素を変えようとする、②認知的不協和が大きいほど、不協和を少なくしようとする力は強く働くと考えました。

認知的不協和(認知的不協和理論)の具体例

認知的不協和の具体例をいくつか紹介します。

  • タバコを吸う人の認知的不協和
  • 酸っぱい葡萄
  • フェスティンガーの実験

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

認知的不協和の具体例1:タバコを吸う人の認知的不協和

冒頭にも紹介しましたが、タバコを吸う人の認知的不協和は、認知的不協和の代表的な例です。

タバコを吸う人は、タバコを吸うと肺がんになる確率が高くなるという事実を知らされると、タバコを吸うことと肺がんになる確率が高くなるという認知の間で認知的不協和を抱え、不快感を抱きます。

その結果、①禁煙するか(行動を変える)、②タバコが健康に及ぼす影響をを低く見積もることで、不協和状態を解消しようとします。

②の例としては、「タバコを吸っても長生きする人はいる。」、「タバコと肺がんに因果関係はない。」などと考えることが挙げられます。

間食が止められない人が「間食することでストレスが解消できる。」と考えたり、大酒を飲む人が「酒は百薬の長だ。」と主張したりするのも、タバコを吸う人の認知的不協和と同じことです。

認知的不協和の具体例2:酸っぱい葡萄

「酸っぱい葡萄」は、イソップ物語に登場する物語の一つです。

あらすじは以下のとおりです。

  • キツネがおいしそうな葡萄を見つける
  • 葡萄は高いところにあり、キツネがどれだけジャンプしても届かない
  • キツネは、「どうせ酸っぱくて不味い葡萄だろう。誰が食べてやるもんか。」と捨て台詞を吐いて立ち去る
  • その後、何匹ものキツネが失敗する
  • 最後に、一匹のキツネが葡萄を取ることに成功する
  • 失敗したキツネたちが、成功したキツネに向かって「酸っぱくて不味い葡萄をとるなんてけしからん。」と言う

この物語では、「葡萄を取ることができない。」キツネたちが、「酸っぱい葡萄なんて葡萄を取らない方が良い。」と状況を正当化することで不快感を軽くしています。

このように、どうしようもない状況を「どうもしない方が良い。」と正当化して不快感を軽くするのも認知的不協和の一つです。

例えば、どうしてもダイエットがうまくいかない人が「好きな物ばかり食べた方が幸せだ」と開き直ったり、結婚相手の見つからない人が「結婚なんてデメリットしかない。」と考えたりするのがこのパターンです。

負け惜しみのように思えるかもしれませんが、どうしようもない状況に押しつぶされず、自分の気持ちを正常に保つ方法として役立つことが多いものです。

認知的不協和の具体例3:フェスティンガーの実験

最後に、フェスティンガーが実際に行った認知的不協和の実験を見てみましょう。

実験の内容は、以下のとおりです。

  • 学生につまらない単純作業をさせて報酬を支払う
  • 作業をした学生に、後から同じ作業に取り組む学生に対して「作業が面白いこと」を伝えさせる
  • 支払う報酬額を変えて実験を繰り返す

つまらない単純作業をさせられた学生は、「単純作業がつまらなかった」という認知(事実)と、それを楽しく伝えるという認知の間で不協和を抱くことになります。

実験では、報酬を増やしたり減らしたりすることで、作業の面白さを伝える程度の違いを確認し、「報酬が少ない学生は、報酬が多い学生に比べてより作業の面白さを伝える」という結果となりました。

フェスティンガーは、この結果について、「報酬の少ない学生は、「報酬が少なく金銭的には割りに合わないけれど、作業自体は面白かったかもしれない。」と考え、認知的不協和を軽減しようとした。」と考えました。

まとめ

認知的不協和(認知的不協和理論)について紹介しました。

あまり聞き慣れない言葉だと思いますが、具体例を見て「あるある」と思った人もいたのではないでしょうか。

学習で考えてみると、ある科目の成績がどうしても伸びない子どもが「子の科目を勉強しても、将来何の役にも立たない。」と開き直るといったことはよくあります。

一時的には認知的不協和による不快感が和らいで良いのですが、開き直りや正当化ばかりを続けていると、勉強に対する意欲を失い、取り組み方も後ろ向きになってしまうので、注意が必要です。

3歳児神話とは?厚生労働省が否定したって本当?保育園は問題?

3歳児神話という言葉を知っていますか?

3歳児神話は、一昔前までは子育ての常識のように受け止められており、保育士や保健師から3歳児神話に基づく子育て指導がなされることも珍しくありませんでした。

最近は、保育士などから3歳児神話に基づく指導を受けることはほぼありませんが、祖父母世代の育児経験者から、3歳児神話に基づく子育ての持論を聞かされる人は少なくないようです。

3歳児神話とはどのようなものなのでしょうか。

また、3歳児神話に基づく指導がなくなった理由は何でしょうか。

この記事では、3歳児神話の概要、賛成・反対意見について紹介します。

3歳児神話とは

3歳児神話とは、子どもの成長にとって大切な生後3歳までの時期はママが子育てを行うべきであり、この時期にママが子育てに専念しないと、子どもの成長・発達に悪影響を及ぼすという考え方です。

一昔前までは子育ての常識のように捉えられていました。

しかし、女性の社会進出が進むにつれて、子育てを女性に押し付け、女性の就業と子育ての両立を妨げる考え方だという批判が強くなったことで鳴りを潜め、現在は、3歳児神話に基づく子育て指導が行われることはほぼなくなりました。

3歳児神話が広まった原因

3歳児神話が広まった発端は、1952年、イギリスの精神科医であるジョン・ボウルビィが、WHO(世界保健機関)の依頼に応じて作成した「母子関係理論」という報告書です。

この報告書には「3歳未満の発達初期に精神的な障害を受けた子どもは、生涯その傷を癒すことができず、社会的に不適応な行動を行うようになる。」という趣旨の内容が記載されています。

母親が育児に専念して終業を諦めることを勧めたり、家庭における子育てと社会内保育の優劣を論じたりする内容ではありませんが、当時の夫婦や家族に対する価値観によって誤って解釈された結果、3歳児神話として世界的に広まってしまいました。

日本では、元々は大家族や地域のつながりの中で子育てが行われていましたが、高度経済成長に伴って核家族化や地域との関係希薄化が進行し、「男は仕事、女は家庭」という性別による役割が規定されたことで、3歳児神話が浸透しました。

厚生労働省は3歳児神話を否定している

厚生労働省は、1998年度の「厚生白書」で、「子どもは3歳までは、常時家庭において母親の手で育てないと、子どものその後の成長に悪い影響を及ぼす」と考える意識、いわゆる「三歳児神話」には「少なくとも合理的な根拠は認められない」と記載し、3歳児神話を否定しています。

厚生白書では、母親の就業の有無が幼少時の子どもに与える影響を調査した結果、3歳児神話の根拠となる因果関係は見つからなかったとされています。

なお、当時は、少子化が社会問題として注目を集め始めており、その原因と言われる晩婚化や未婚化への対策として、女性のみに子育てを押し付ける3歳児神話を否定したと考えられます。

つまり、3歳児神話が浸透したのも否定されたのも、当時の社会情勢が色濃く影響していると言えます。

3歳児神話に含まれる3つの考え方

現在、3歳児神話は、一昔前の子育ての悪しき考え方だと捉えられ、全否定されがちです。

しかし、3歳児神話にはいくつかの考え方が含まれており、その一部は子育てにおいて忘れてはならない重要なものです。

3歳児神話に含まれる考え方は、以下のとおりです。

  1. 生後3歳までの過ごし方が子どもの成長にとって重要である
  2. 性別的に子育ての適正があるママが子育てに専念すべきである
  3. ママが就業などで生後3歳まで子育てに専念しなかった場合、子どもの成長に悪影響を及ぼす

重要なのは1.の考え方です。

生後3歳頃までは、周囲から愛情を注がれ、たくさんお世話をしてもらうことで、自分が大切な存在であることを自覚し、他人を信頼する気持ちを育む時期です。

一方で、注がれるべき愛情は、子どもに寄り添い、受け入れてあげる類のものであり、必ずしも女性だけが担うことができるものではありません。

2.や3.の「ママが」という点については、必ずしも当てはまらないと言えます。

3歳児神話の賛成と反対

3歳児神話は、厚生労働省が否定する考えを示して以降、反対(否定)意見が主流になっています。

3歳児神話の賛成(肯定)意見

3歳児神話の賛成(肯定)意見としては、ママが8歳まで子育てに専念すべきというものや、性別による子育て適性の存在を肯定するものなどがあります。

3歳児神話の反対(否定)意見

3歳児神話の反対(否定)意見としては、子どもが生後3歳未満でママが職場復帰したことと子どもの発達には関係がないとする追跡調査の結果が複数あります。

ただし、賛成意見も反対意見も明確な根拠が示されているわけではありません。

3歳児神話と保育園

厚生労働省が3歳児神話を否定した後、公的な場で3歳児神話に基づく子育て指導が行われることはほぼなくなりました。

一方で、冒頭に書いたとおり、3歳児神話に基づいて子育てをしてきた世代からは、「ママは子育てに専念すべき。」、「保育園なんかに入れたら良い子に育たない。」という指摘を受けることが少なくありません。

しかし、ママが就業できないことにストレスを抱えながら子育てに専念すると、子どもにも意識的無意識的にそれが伝わり、良い影響は与えません。

それよりも、子どもを保育園に預けて日中は気持ちよく働き、帰宅後は親子で過ごす方が、ママにとっても子どもにとっても健康的な生活が送れるはずです。

また、日本の乳幼児保育は世界的に見ても高い水準にあるため、たいていの場合は「保育園に入れたから子どもが問題ばかり起こすようになった。」ということにはなりません。

子育てに専念するか、子どもを保育園に預けて働くかは個人の選択ですが、夫婦でよく話し合い、ママと子どもがより快適に過ごせる方を選ぶことが大切です。

まとめ

3歳児神話について紹介しました。

ママが子育てに専念することは悪いことではありません。

しかし、女性の社会進出が進み、経済的な事情のみでなく、社会的つながりや自己実現のために就業を続けたいと望む女性が増え続けている状況においては、女性だけに子育てを押し付ける3歳児神話の考え方は受け入れられなくなっています。

今後は、これまで以上に、性別にこだわらず、夫婦で協力しながら子育てに取り組むことが求められることになるでしょう。

モラトリアムの意味とは?期間は青年期?モラトリアム人間とは?

「モラトリアム」という言葉を聞いたことがありますか。

一時期、「モラトリアム症候群」や「モラトリアム人間」という言葉が流行していたので、そうした言葉を覚えている人もいるかもしれません。

実は、モラトリアムにはいくつもの意味があるのですが、この記事で紹介するのは発達心理学におけるモラトリアムで、人の発達段階における一時期を表す言葉です。

では、発達心理学におけるモラトリアムとはどのような意味で、どのような時期のことを指すのでしょうか。

また、人の発達段階においてモラトリアムが果たす役割とは何でしょうか。

この記事では、発達心理学におけるモラトリアムの意味、期間、モラトリアムから抜け出せない場合(モラトリアム人間)について紹介します。

発達心理学におけるモラトリアムの意味とは

モラトリアムとは、人が一人前の大人として社会に出る前の、社会的な責任や義務を果たすことを猶予されている期間を表す概念です。

英語では「moratorium」と表記し、日本では「モラトリアム」とか「猶予期間」と訳されます。

モラトリアムは、心理社会的発達理論で有名な心理学者のエリク・H・エリクソン(Erik Homburger Erikson)が、青年期(12歳~22歳)における人の特質を表すのに「心理社会的モラトリアム」という言葉を使ったことから、発達心理学用語として定着したと考えられています。

元々は「債務の支払いの猶予期間」、「法律の公布から施行までの猶予期間」という意味で用いられていた単語ですが、現在は、発達心理学におけるモラトリアムの認知度が高まっています。

エリクソンの心理社会的発達理論とは、発達心理学者E・H・エリクソン(エリク・ホーンブルガー・エリクソン)が提唱した、人が生まれてから死ぬまでに心理社会的にどのように発達するかに関する理論です。

この理論では、人は、生まれた時から予定された発達段階に沿って成長するものだと考えられており、各発達段階には乗り越えるべき課題(発達課題)と危機(心理社会的危機)が設定されています。

そして、発達課題がどのように解決されるか、もしくは解決されないかによって、その後の人格形成に影響を及ぼすとされています。

心理社会的発達理論では、発達段階が8段階に分けられており、各段階の発達課題が「vs」という対の形で表記されています。

  1. 乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
  2. 幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
  3. 幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
  4. 児童期・学齢期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
  5. 青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
  6. 成人期(就職して結婚するまでの時期):親密性vs孤立
  7. 壮年期(子供を産み育てる時期):世代性vs停滞性
  8. 老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望

引用:知育ノート

モラトリアムの期間

モラトリアムは、簡単に言うと「実際に社会に出て行く前に、大人になることについてじっくり考える準備期間」です。

「自分がどのような大人になるのか冷静に考えられるくらい精神が成熟し、肉体も大人と同じくらい成長しているけれど、社会的責任や義務が猶予されている期間」とも言えます。

年齢で表すと、18~22歳時期で表すとすれば、大学生や大学院生の頃が該当します。

日本におけるモラトリアム

エリクソンは、モラトリアムを「人が一人前の大人として社会に出て行くために必要な準備期間」だと位置づけていました。

しかし、日本におけるモラトリアムは、「社会的に許された猶予期間を過ぎているのに、いつまで経っても猶予を求め続けて大人になろうとしない(社会的責任や義務を果たそうとしない)状態」を指すことが多くなっています。

これは、精神分析医の小此木啓吾の著書「モラトリアム人間の時代」など、モラトリアムの否定的側面を強調した書籍や主張の影響だと考えられています。

モラトリアム人間

モラトリアムの否定的側面を捉えた表現として、モラトリアム人間という単語が生み出されています。

モラトリアム人間とは、一人前の大人として社会に出て、社会的責任や義務を果たすべき年齢に達しているにもかかわらず、精神的に未熟で社会に入り込めずにいる人間(その状態)のことです。

つまり、周囲からは大人の一員になるべきだと見られているのに、モラトリアムから抜け出そうとしない人が、モラトリアム人間です。

モラトリアム人間の特徴は、以下のとおりです。

  1. ありのままの自分を認められない
  2. 当事者意識が薄い
  3. 選択できない
  4. 無気力

モラトリアム人間の特徴1:ありのままの自分を認められない

モラトリアム人間は、「まだ本気出してないだけ。」とか「本当の自分はもっとできる人間だ。」と思い込み、そこから抜け出しにくい傾向があります。

モラトリアム人間の特徴2:当事者意識が薄い

自分や所属する集団の課題や問題に対して当事者意識を持てず、他人事のような対応をすることが多いものです。

結果、周囲と親密な関係が築けず孤立しがちです。

モラトリアム人間の特徴3:選択できない

「ありのままの自分を認められない=自分を客観的に見られない」ので、人生における重要な選択を迫られてもあちこち目移りし、何も選択できません。

当然、仕事を続けるのが難しく、短期間で職場を転々としたり、ニートになったりします。

モラトリアム人間の特徴4:無気力

モラトリアム人間は、ありのままの自分が認められず、進むべき道も定まらず、当事者意識が持てないため周囲からも疎んじられがちです。

そのため、内にも外にもやる気を引き出す刺激がなく、無気力状態に陥りがちです。

こうした一連の症状をモラトリアム症候群と表現することもあります。

モラトリアム人間を抜け出すには

モラトリアム人間は、日本に限らず増え続けていると考えられています。

原因としては、本人の性格や資質といった内的要因だけでなく、以下のような外的要因も大きいものです。

  • 家庭環境:ひとり親家庭、親がいない、過保護・過干渉、DV家庭、家族にモラトリアム人間がいるなど
  • 周辺環境:情報過多、指導者の不在、モデルとなる人物の不在、友人・知人との関わりの乏しさなど

性格や資質を変えるのは容易ではありません。

そのため、モラトリアム人間を抜け出すには、取り巻く環境を改善することが重要です。

そのためには、まず「ありのままの」自分を受け入れ、自分のできることややりたいことを実際に取り組んでみることです。

行動することで、できることややりたいことが具体化され、進路もおのずと見えてくるものです。

当然、モラトリアム人間になった状態から一人で抜け出すのは困難なので、周囲の支えは不可欠です。

まとめ

モラトリアムは、本来、一人前の大人として社会に出て活躍するために必要な期間です。

しかし、モラトリアム期間というのは、一定の成長を遂げながら周囲から社会に出ることを猶予されている「ぬるま湯」の状態なので、いつまでも浸かり続けてモラトリアム人間になってしまうリスクをはらんでいます。

一旦、モラトリアム人間になると抜け出すのは容易ではなく、社会に出るのが遅くなりがちなので、子どもの様子を慎重に観察し、子どもが自分の意思で生きる道を選択して社会に出て行けるようサポートしてあげることが大切です。

「年齢的にはもう一人前だから。」と遠慮せず、積極的に関わってあげましょう。

ビジネス心理学とは?子育てで使いがちなビジネス心理学は?

以前からビジネスに利用されてきた心理学の知識やノウハウが、最近はネットなどで手軽に学べるようになり、ビジネス心理学という言葉が生まれました。

ビジネス心理学に登場するのは、その名のとおり、ビジネスで活用される心理学の知識やノウハウです。

ビジネスはあくまで利益を追求するもので、そこで利用される心理学というのは「人心掌握のスキル」であり、人間関係や子育てには向かない(良い影響を及ぼさない)ことが多いものです。

ところが、実際の子育て場面では、ビジネス心理学に登場する心理学の知識やノウハウを使ってしまっていることがままあります。

この記事では、ビジネス心理学の概要と、子育てで使いがちなビジネス心理学について紹介します。

ビジネス心理学とは

ビジネス心理学とは、ビジネス場面で利用される心理学の知識やノウハウの総称です。

心理学には、行動心理学、認知心理学、発達心理学など心理学の様々なジャンルがありますが、それぞれのジャンルで培われてきたもののうち、ビジネス場面で利用できるものをまとめてビジネス心理学と呼んでいます。

(※注目されることが多いのは行動心理学の知識やノウハウですが、ビジネス心理学=行動心理学の知識やノウハウということではありません。)

ここでいうビジネスとは、リアル社会におけるビジネスだけでなく、Webマーケティングも含まれています。

車販売会社の店員が客の信頼を得て新車を買わせるノウハウも、開封率の高いメルマガを送信するノウハウも、ビジネス心理学の中に含まれています。

ビジネス心理学が子育てに向かない理由

例えば、車販売会社の店員が客の信頼を得るのも、高い確率でメルマガを開封させるのも、取引先の社長や社員と信頼関係を築いたりするのも、自分や会社が利益を得るための布石です。

ビジネス心理学の書籍やサイトでは、上司や同僚と円滑な関係を築く方法も紹介されているものもありますが、これも突き詰めれば、職場で円滑な関係を構築して業績を上げる(利益を得る)ためです。

つまり、ビジネス心理学の目的は、相手の心をうまく誘導したり、相手と思い通りの関係を築いたりして「利益を得ること」です。

ビジネス心理学には、人間関係を円滑にする心理学の知識やノウハウがたくさん登場しますが、根幹には「利益を追求する」という目的が存在しているのです。

そこが一般的な心理学とは異なるところであり、ビジネス心理学が子育てには向かない、良い影響は与えないと考えられている理由です。

子育てで使いがちなビジネス心理学

ビジネス心理学は子育てには向かないと紹介しました。

しかし実は、実際の子育て場面では、ビジネス心理学に登場する心理学の知識やノウハウが、意識的もしくは無意識的に活用されているものです。

代表的なものは、以下のとおりです。

  • 返報性の原理(好意の返報性)
  • ローボールテクニック
  • カリギュラ効果

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

返報性の原理(好意の返報性)

返報性の原理とは、他人から何かをしてもらったら、お返しをしなければならないと思う心理のことです。

ビジネス場面における返報性の原理の例としては、試食、サンプル提供、無料相談などが挙げられます。

いずれも、客は無償(無料)で何らかの物やサービスを受け取った結果、「何かお返しをしなければならない(商品を買わなければならない)」と思い、お金を払うことになります。

子育て場面における返報性の原理の例としては、親が子どもに対して過剰な期待や高望みをして、子どもがそれに押しつぶされることが挙げられます。

親が子どもに期待をかけ、子どもが応えようとするのは自然なことです。

しかし、親が「私がこんなに期待しているのだからもっと頑張って結果を出せ。」といった態度で接すると、子どもは頑張りすぎて疲弊してしまいます。

子どもの「親の期待に応えたい。」という気持ちを利用して、自分の利益を追求して(自分の理想を押し付けて)しまっています。

ローボールテクニック

ローボールテクニックとは、最初に受け入れやすい良い条件のみを提示し、後から少しずつ不利な条件を提示していく方法です。

ビジネス場面におけるローボールテクニックの例としては、割引表示があります。

「店内商品最大80%オフ」、「最大10000円割引」という割引表示につられて入店したら、実際に割引されるのは一部商品のみだったことはありませんか。

これは、割引表示で購買意欲をあおって(受け入れやすい条件を提示して)入店させ、実際には割引対象外の商品を購入させるためのローボールテクニックです。

子育て場面におけるローボールテクニックの例としては、以下のような場合が挙げられます。

  • 親:「好きなお菓子あげるから、宿題してね。」
  • 子ども:「うん」
  • (宿題終了後)
  • 親:「あ、あのお菓子もうなかった、別のでいい?」
  • 子ども:「・・・うん」

ローボールテクニックを使っていると、子どもが親の言うことを信用しなくなっていきます。

特に思春期以降の子どもに対してローボールテクニックを使うと、親子関係をギクシャクさせてしまいがちです。

カリギュラ効果

カリギュラ効果とは、禁止されたことほど実行してみたくなるという心理のことです。

モザイク処理や音声処理が施されたCMや、「本気で痩せたい人以外は見ないでください。」というタイトルのメルマガなどがカリギュラ効果を狙ったものとして挙げられます。

いずれも、禁止・制限することで客の興味をかきたてています。

子育て場面におけるカリギュラ効果の例としては、「子どもだからダメ」という禁止・制限のやり方が挙げられます。

子どもの行動や態度を禁止・制限する際に、きちんと理由を説明せず「子どもだからダメ。」とだけ言うと、子どもとしては納得できず、禁止・制限されたことにより興味を持ちます。

その結果、禁止・制限されたことを隠れて実行したり、親に反発したりすることになります。

親にとっては楽なしつけ方ですが、子どもの納得が得られず、多用すると親子関係を悪化させることもあるので、注意が必要です。

まとめ

ビジネス心理学の概要と、子育てで使いがちなビジネス心理学について紹介しました。

当然ですが、ビジネスと子育ては違うもので、それぞれの場面で必要なスキルも違います。

しかし、人は誰でも「期待に応えてほしい。」、「相手を思い通りにしたい。」といった欲求を持っているもので、その欲求はビジネスでも子育てでも大差ありません。

子育てにおいて、ビジネス心理学に登場する効果や法則を使ってしまうのも、そうした欲求の現れと言えます。

欲求を完全に封じ込めることはできませんが、親としては、自分の言動が子どもにどのような影響を与える可能性があるのかを意識し、不適切な関わり方は少しずつでも改善していけるよう努めましょう。

セルフ・ハンディキャッピングとは?種類と具体例、克服法は?

テストで悪い点数を取った子どもが、「部活が忙しくて勉強する時間がなかったから仕方ない。」とか「聞いていた範囲以外のところから出題された。」などと言うのを聞いたことはありませんか?

パパママとしては「言い訳ばかりして。」と思うかもしれませんが、実はこれ、セルフ・ハンディキャッピングといって、子どもにとっては自分を守るための大切な行動です。

では、セルフ・ハンディキャッピングとはどういうものなのでしょうか?

また、どうして子どもにとって大切なのでしょうか?

この記事では、セルフ・ハンディキャッピングの概要、種類、具体例、克服法について紹介します。

セルフ・ハンディキャッピングとは

セルフ・ハンディキャッピングとは、失敗の原因を自分以外の外的な要因に求め、一方で成功の原因を自分の内的な要因に求める選択や行動を表す概念です。

セルフ・ハンディキャッピングは、アメリカの心理学者であるエドワード・E・ジョーンズ(Edward E.Jones)が提唱した概念で、英語では「self-handicapping」と表記し、日本ではそのままセルフ・ハンディキャッピングと呼ばれています。

セルフ・ハンディキャッピングを簡単に言い換えると、「失敗は他人や周囲のせいにして、成功は自分の努力や才能のおかげだと考える」ということです。

こんな性格の人がいたら、はっきり言って友達にはなりたくないと思うはずですが、子どもにとってはメリットが多いものです。

セルフ・ハンディキャッピングのメリットとデメリット

セルフ・ハンディキャッピングのメリットとデメリットについて見ていきましょう。

セルフ・ハンディキャッピングのメリット

まず、セルフ・ハンディキャッピングのメリットは、以下のとおりです。

  • 自尊心を守る(自己評価を下げない)
  • 自尊心を高める(自己評価を上げる)
セルフ・ハンディキャッピングのメリット1:自尊心を守る(自己評価を下げない)

あらかじめ自分自身にハンディキャップを課しておくことで、うまくいかなかった時に「ハンディキャップがあったせいだ。」と言い訳して自尊心を守ることができます。

セルフ・ハンディキャッピングのメリット2:自尊心を高める(自己評価を上げる)

ハンディキャップを課した状況でうまくいけば、「ハンディキャップがあったのに成功した。」と捉えて自尊心を高めることができます。

つまり、セルフ・ハンディキャッピングを活用すれば、うまくいかなくても自分の心を守ることができ、うまくいけばやる気を高めることができるのです。

セルフ・ハンディキャッピングのデメリット

一方で、セルフ・ハンディキャッピングのデメリットは、子どもが本来持っている能力を十分に伸ばしにくくなることです。

成功や失敗の原因を自分の努力や能力以外に求めるため、成功しても失敗してもそこから得られるものは多くありません。

また、繰り返すうちに無意識のうちにハンディキャップを課す習慣が身について、物事に真剣に取り組もうとせず、努力やチャレンジを惜しむようになります。

セルフ・ハンディキャッピングの種類と具体例

セルフ・ハンディキャッピングには、2つの種類があります。

  • 獲得的セルフ・ハンディキャッピング
  • 主張的セルフ・ハンディキャッピング

獲得的セルフ・ハンディキャッピング

獲得的セルフ・ハンディキャッピングとは、優先的に取り組むべき課題などの妨害になることをあえて行う行為です。

つまり、ハンディキャップを自分自身で作り出す行為です。

例えば、試験勉強期間中にスマホゲームに打ち込む、深夜まで出歩いて夜更かしする、おもむろに片づけを始めるなどが獲得的セルフ・ハンディキャッピングです。

主張的セルフ・ハンディキャッピング

主張的セルフ・ハンディキャッピングとは、自らにハンディキャップがあることを周囲に吹聴する行為です。

例えば、友達に「明日のテストの勉強、全然してない。」とか「子の科目苦手でさ」などとあらかじめ言っておくことが主張的セルフ・ハンディキャッピングです。

セルフ・ハンディキャッピングを克服する方法

セルフ・ハンディキャッピングは、適度に活用すれば自尊心の維持・向上に役立ちますが、使いすぎるとチャレンジ精神がなくなり、努力もしなくなってしまうリスクがあります。

そのため、子どもが慢性的にセルフ・ハンディキャッピングを繰り返している場合は、克服させる必要があります。

子どもに克服させる方法としては、以下の4つがあります。

  • ビッグマウス
  • 失敗を恥ずかしいと思わせない
  • 失敗しても言い訳をさせない
  • アドバンテージを考えさせる

ビッグマウス

例えば、「今度のテストで100点を取る!」とか「絶対〇〇高校に進学する!」など、子どもに目標を口に出して宣言させてみましょう。

子どもは、あれこれ悩んでいる時よりも、やるべきことが決まり、後がなくなった時の方が頑張ることができるものです。

大切なのは、たとえ子どもの宣言が非現実的なものであっても頭ごなしに否定せず、親として支持してあげることです。

失敗を恥ずかしいと思わせない

セルフ・ハンディキャッピングは、自己防衛の一種です。

子どもは、「失敗によって自尊心や自己評価を下げたくない。」、「失敗して恥ずかしい思いをしたくない。」と思うからこそセルフ・ハンディキャッピングを行うのです。

しかし、失敗を重ね、そこから学習してこそ成長できるのであり、失敗を恥ずかしがっていては子供が本来持っている力が十分に伸びません。

そのため、親としては、子どもが積極的にチャレンジする姿勢を支持し、失敗しても努力を労ったり褒めたりして、子どもが「失敗しても良いんだ。」と思えるように関わってあげましょう。

失敗しても言い訳をさせない

子どもは、失敗するとあれこれ言い訳をします。

「失敗を怒られたくない。」、「できない子だと思われたくない。」など理由は様々ですが、色々な言い訳をするものです。

言い訳は、自尊心や立場を守るための手段であり、それ自体がダメというわけではありません。

子どもが言い訳をしながらも失敗を反省し、同じ失敗を繰り返さないのであれば、気にする必要はないでしょう。

しかし、言い訳ばかりして失敗の原因に目を向けず、同じ失敗を繰り返す場合は問題です。

親としては、子どもの努力を労いつつ、失敗を言い訳せず、同じ失敗を繰り返さないためにはどうすれば良いか、子どもの課題は何かを考えるよう促してあげましょう。

アドバンテージを考えさせる

ハンディキャップだけでなく、アドバンテージを考える習慣をつけさせることも有効です。

例えば、「テスト勉強する時間は十分に確保できなかったが、得意科目なので何とかなるだろう。」とか「筆記試験は苦手だが、人見知りしないから面接はいけそうだ。」など、自分の強みを考えさせてみましょう。

セルフ・ハンディキャッピングを急に止めさせるのは困難ですが、ハンディキャップとアドバンテージを一緒に考えさせるうちに、少しずつ子どもの意識を変化させていくことができるはずです。

まとめ

セルフ・ハンディキャッピングは、子どもに限らず誰でも行っているもので、心を守るための自己防衛の一つとして大切な機能です。

しかし、行き過ぎると意欲を削ぎ、本来持っている能力を発揮できなくなってしまうので、セルフ・ハンディキャッピングに依存している場合は克服させる必要があります。

子どもが個人で克服するのは難しいので、パパママが親として手助けしてあげることが大切になります。