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知育ノート

赤ちゃん、幼児、子供の力を伸ばす知育、知育玩具、関わり方やそれらに関する知識を紹介しています。

発達関係の心理学の理論!ゲゼル、ピアジェ、フロイトの理論は?

心理学用語 心理学用語-発達理論

人の発達については、心理学の分野を中心に研究が重ねられ、たくさんの理論が発表されています。

行動主義の学習理論、ピアジェの認知発達理論、エリクソンの心理社会的発達理論などは、心理学以外の世界でも有名なので、聞いたことがある人もいるでしょう。

心理学の知見は、心理学の世界だけでなく、学校教育、発達障害の子どもの療育、知的障害の子どもの教育などの分野で活用されており、現代教育とは切っても切り離せないものになっています。

この記事では、心理学における発達の主な理論の概要について紹介します。

発達心理学の主な理論

この記事で紹介する発達心理学の研究や理論は、次のとおりです。

  • フロイトの心理性的発達理論
  • ゲゼルの成熟優位説
  • 行動主義の学習理論
  • ピアジェの発生的認識論
  • バンデューラの社会的認知理論
  • エリクソンの社会的発達理論

それでは、一つひとつ詳しく見ていきます。

フロイトの精神分析理論

精神分析学者のジークムント・フロイトは、人間の行動の基盤に「リビドー(性的欲求)」を想定し、発達するにつれてリビドーを満たすための身体的部位が移り変わる(段階がある)と考えました。

また、ある段階でリビドーが十分に満たされると、健康な人格が形成されて次の段階へ進む一方で、不十分だとその段階に留まると指摘されています。

精神分析理論では、乳児期からリビドーがあると考え、ある時期にリビドーを満たす身体的部位に基づいて口唇期・肛門期、エディプス期、潜伏期、性器期という発達段階を展開しています。

  • 口唇期(生後0歳0ヶ月から生後1歳頃)::口やくちびる(口唇)周辺にリビドーを得る時期
  • 肛門期(生後1歳頃から生後3歳頃):おしりの穴(肛門)にリビドーを得る時期
  • エディプス期(生後4歳から生後6歳頃):性器に関心を持つ時期(男根期)
  • 潜伏期(生後6歳から思春期):リビドーが一旦治まる時期
  • 性器期(思春期以降):部分的な性欲が性器愛中心の性欲に統合される時期

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ゲゼルの成熟優位説

ゲゼル・A・Lは、人の発達を生物学的な成熟という視点でとらえようとした、発達の成熟有意説の代表的な人物です。

ゲゼルは、観察、パパママとの面接、動画の分析などの方法を駆使し、赤ちゃんや幼児期の子どもの行動を縦断的に記録することで、乳幼児の標準的な発達を示しました。

また、乳幼児の発達について5つの原理を提唱しました。

  • 発達的方向の原理:発達は一定の順序に従って進むという原理(頭部から末端にかけて発達する)
  • 相互交差の原理:発達は、相反する機能が対になって交互に現れ、関連を持ちながら発達するという原理(足を伸ばしたり縮めたりする動きが統合されて歩行という動作になるなど)
  • 機能非対称の原理:一時的に非対称な発達をするという原理(原始反射の一つ非対称性緊張性頸反射など)
  • 自己調整的動揺の原理:発達は、安定と不安定の間で揺らぎながら、少しずつ安定に向かうという原理
  • 個別化成熟の原理:発達は、一定の順序で表れる発達の早さは遺伝的に決定されており、環境の影響は一時的なものだという原理

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行動主義の学習理論

行動主義とは、人の行動について、内面や心理的な状態に原因を求めなくても、科学的に研究できるという主義・主張のことです。

行動主義の心理学者は、心を客観的に捉えるために、目に見える行動を研究の対象とし、発達を、環境からの働きかけを受けて行動が変化することだと主張しています。

つまり、発達と学習をほぼ同じものとして捉えていると言えます。

行動主義における代表的な学習(発達)の方法は、次の2つです。

  • 古典的条件付け(レスポンデント条件付け)
  • オペラント条件付け

古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とは

古典的条件付けとは、中性刺激と無条件刺激を繰り返し対呈示することで、中性的な刺激によって生理的反射を引き起こすようにすることです。

  • 生理的反射(無条件反射):生き物が本来持っている反応
  • 生理的刺激:生理的反射を引き起こす刺激
  • 中性刺激:無

オペラント条件付けとは

オペラント条件付けとは、特定の自発的な行動をした時に、報酬(正の強化刺激)や罰(負の強化刺激)を与えることで、その行動を強化もしくは弱化させることです。

オペラントとは、オペラント条件付けを体系的に研究したアメリカの心理学者バラク・フレデリック・スキナーが、自発的に行動するという意味の「operate」をもじって造った言葉です。

  • 正の強化刺激:オペラント行動(自発的な行動)の出現頻度を高める刺激
  • 負の強化刺激:オペラント行動の出現頻度を低める刺激
  • 強化:オペラント行動の出現頻度が高まること
  • 弱化:オペラント行動の出現頻度が低まること

 引用:古典的・レスポンデント条件付けとオペラント条件付けとは?違いと例は?-知育ノート

条件反射を引き起こさない刺激

ピアジェの発生的認識論

スイスの心理学者ジャン・ピアジェは、人の認知機能(ある物事を知覚して判断・解釈する機能)の発達について研究を重ね、発生的認識論を提唱しました。

発生的認識論では、人の認知発達は、一定の方向に向かって段階的に進むもので、発達とは、より高次のシェマ(周囲の物事を把握する枠組み)を獲得する(シェマを変化させる)ことだと考えられています。

ピアジェの発生的認識論では、人の認知機能の発達を4つの段階に分類しています。

  • 感覚-運動期(生後0歳から2歳頃):感覚と運動によって外界を認識し、理解しようとする段階
  • 前操作期(生後2歳~生後6歳):外界の認識が、感覚と運動から操作(脳内で行動をイメージとして内在化し、行動から生じる結果を想像すること)へ発達するための過渡期
  • 具体的操作期(生後7歳~生後11歳頃):具体的で日常的な物ごとに限り、論理的に考えることができるようになる時期
  • 抽象的操作期(生後11歳以降):非現実的な前提での推論や抽象的な推論ができるようになる時期

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バンデューラの社会的認知理論

心理学者のアルバート・バンデューラは、人の認知機能に着目して、知的な発達と社会的な発達を統合的に扱う社会的認知理論を発表しました。

社会的認知理論では、人の認知機能を5つに分類しています。

  • 象徴的能力:言葉やイメージを思考の道具とする能力
  • モデリング:他人をモデルにして、他人の行動を取り入れる能力
  • 予期能力:行動の結果を予期したり、ある結果を得るための行動をうまくできるかどうかを予期したりする能力
  • 自己制御能力:自分の利益と社会の利益を考えて行動をコントロールする能力
  • 自己反省能力:経験を次に生かす能力

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エリクソンの社会的発達理論

発達心理学者のE・H・エリクソンは、人の行動の基盤として「自我」を想定し、自我が予定された発達段階に沿って自律的に機能すると考えました。

また、人生の各段階における自我の葛藤を解決したかどうか、もしくは克服方法によって、その後の人格形成に影響が出ることを指摘しました。

心理社会的発達理論では、発達段階が8段階に分けられており、各段階の発達課題が「vs」という対の形で表記されています。

  1. 乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感
  2. 幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):自律性vs恥・羞恥心
  3. 幼児後期(4歳~6歳):積極性(自発性)vs罪悪感
  4. 児童期・学齢期(6歳~12歳):勤勉性vs劣等感
  5. 青年期(12歳~22歳):同一性(アイデンティティ)vs同一性の拡散
  6. 成人期(就職して結婚するまでの時期):親密性vs孤立
  7. 壮年期(子供を産み育てる時期):世代性vs停滞性
  8. 老年期(子育てを終え、退職する時期~):自己統合(統合性)vs絶望

 引用:エリクソンの心理社会的発達理論に見る赤ちゃん、子供、大人の発達段階は?-知育ノート

まとめ

 発達に関する心理学の理論の概要を紹介しました。

それぞれ、膨大な数の研究結果が発表されているので、関心がある人は調べてみてください。

知育ノートでも、各理論について詳しく紹介した記事を書いています。

ステレオタイプの意味とは?例や対義語・反対語は?偏見との違いは?

心理学用語 心理学用語-ステレオタイプ

「B型はマイペースだ。」、「大阪のおばちゃんはおしゃべりでおせっかいだ。」、「イタリア人は女癖が悪い。」、「大学教授はまじめで本ばかり読んでいる。」など、性別、年齢、人種、外見、職業から他人を捉えることはありませんか?

こうした捉え方がステレオタイプです。

人は誰でも、ステレオタイプを持っていて、ステレオタイプの認知で周囲の人や物事を捉えているものです。

ステレオタイプは、人が社会内で生活する上で欠かせないものですが、一方で、物事をゆがめて認知するリスクも抱えています。

この記事では、ステレオタイプの意味、例、対義語・反対語と偏見との違い、メリットとデメリットについて紹介します。

ステレオタイプとは

ステレオタイプとは、所属する社会や集団内に浸透している、型にはまった(固定化された)物事の見方、思考、概念、観念のことです。

英語ではstereotypeと表記します。

stereotypeは、元々、同じ鋳型から打ち出された鉛板という意味でしたが、現在はこの記事で紹介する社会学における意味の方が有名になっています。

日本ではステレオタイプと呼ばれることが多いものですが、紋切り型、思い込み、偏見、レッテル、先入観などと訳されることもあります。

ステレオタイプの例

ステレオタイプは無数に存在しますが、代表的な例をいくつか紹介します。

  • 性別
  • 血液型
  • 人種・国籍
  • 地域
  • 仕事

ステレオタイプの例:性別

例えば、男性に対するステレオタイプを表す単語としては、たくましい、威厳がある、いざという時に頼りになる、頑固、暴力的、デリカシーがないなどが挙げられます。

また、女性に対するステレオタイプを表す単語としては、やさしい、愛嬌がある、気が利く、おしゃべり好き、嫉妬深い、わがままなどが挙げられます。

全ての男性がたくましいわけではありませんし、全ての女性がおしゃべり好きなわけではありませんが、多くの人が性別に対するこうしたステレオタイプを持っています。

ステレオタイプの例:血液型

日本人は、外国人に比べると、血液型ステレオタイプを持っている人が多いと言われています。

  • A型:気配りができる、神経質、羽目を外さない、まじめ
  • B型:マイペース、思ったことを口にする、楽観的、人見知りしない
  • O型:現実的、逆境に強い、小さいことにこだわらない、野心家
  • AB型:繊細で傷つきやすい、合理的、裏表がある、ユニーク

科学的な根拠は何もありませんが、他人の血液型を聞くとつい「B型か~マイペースなんだろうな~」などという考えが頭をよぎる人はたくさんいます。

ステレオタイプの例:人種・国籍

人種や国籍によるステレオタイプは、一昔前に比べると表面化しなくなりましたが、今でも根強く残っています。

例えば、白人から見た外国人のステレオタイプは、次のとおりです。

  • 日本人の男性:背が低くて出っ歯、メガネをかけて首からカメラをぶら下げている、ワーカホリック、オタク
  • 日本人の女性:献身的で夫を立てる、性的に奔放
  • アジア人:時間や約束にルーズでいい加減、目上の者に従順、個人の意見がない

ステレオタイプの例:地域

地域に関するステレオタイプも、日常的によく耳にするものです。

  • 都会:表面的な人間づきあいしかない、人が冷たい、時間に追われている、おしゃれ
  • 田舎:人間関係が濃い、地味、言葉のなまりが酷い、年寄りが多い

ステレオタイプの例:仕事

仕事に関するステレオタイプは、国や地域によって違いが大きいものですが、どこにでも存在しています。

  • 科学者:白衣を着ている、理屈っぽい
  • 大学教授:本ばかり読んでいる、実験ばかりしている、得体が知れない
  • 保育士:子供好き
  • スポーツ選手:スポーツ万能

ステレオタイプの対義語・反対語

stereotypeの対義語としては、counter-stereotype,やreverse stereotypeなどが挙げられます。

日本語では、型にはまらない物の見方、思考、概念、観念と表現することがありますが、しっくりくる言葉は見当たりません。

ステレオタイプと偏見の違い

偏見とは、読んで字のごとく、物事に対する偏った見方のことです。

偏った見方というと、肯定的な見方と否定的な見方の両方を含むように聞こえますが、偏見は、自分の経験や知識などに基づく否定的な感情や評価のことです。

一方で、ステレオタイプとは、所属する社会や集団内の多くの人が共有している、型にはまった物の見方などのことで、肯定的なものも否定的なものも含まれています。

また、ステレオタイプによって人や物事を捉えることで、差別や偏見を引き起こすきっかけになることがあります。

つまり、ステレオタイプは「差別を引き起こしうる固定化された物の見方」、偏見は「ステレオタイプを含む経験や知識などに基づく否定的な感情や評価」だと言えます。

ステレオタイプのメリットとデメリット

ステレオタイプは、デメリットが注目されることが多いものですが、メリットとデメリットの両方が存在します。

ステレオタイプのデメリット

人は、日常的に、ステレオタイプの認知によって他人や物事を評価したり感情を生じさせたりし、そうした偏った評価や感情に基づいて行動を起こします。

しかし、ステレオタイプの認知は、対象となる人や物を過剰に単純化し、対象が本来持っている性質や独自性を捨象してしまいがちです。

そのため、対象を誤解したまま否定的な評価や感情によって差別や偏見を生じさせることがあります。

ステレオタイプのメリット

ステレオタイプのメリットは、認知資源の節約ができることです。

人の周りには、常に膨大な情報が変化を伴いながら渦巻いていますが、人の認知資源(情報を処理する容量)は限られているので、 情報を一つひとつを取り上げて処理していると、脳がパンクしてしまいます。

そのため、無数の情報の中から必要なものだけを取り出して処理することで、認知資源を節約することが大切になります。

ステレオタイプの認知は、膨大な情報を一定の型にはめて把握することで、認知資源の節約に貢献します。

つまり、情報を効率的に処理することに役立っているのです。

例えば、車の運転中に子どもが視界に入った場合を考えてみましょう。

ほとんどの人は、「子どもは、危険かどうかを判断する力が未熟だから、思いがけない行動をするものだ。」というステレオタイプの認知をすることで、子どものそばを注意して通過する判断ができます。

もしもステレオタイプの認知が機能せず、「男の子だ、髪は短い、身長は、体型は、飛び出してこないだろうか、こちらに気づいているだろうか・・・」などと情報を網羅的に処理していたら、いつまで経っても適切な判断ができないでしょう。

ステレオタイプを変える方法

ステレオタイプは、人が社会や集団の中で生活するうちに意識せずに身につくものなので、変えるのは容易ではありません。

しかし、自分と違うカテゴリーに所属する人と触れ合ったり、その人が所属する社会に入ったりすることで、そのカテゴリーに対するステレオタイプは少なくなっていくと考えられています。

まとめ

ステレオタイプについて紹介しました。

ステレオタイプは、情報を効率的に処理するために欠かせない能力で、誰もが日常的に使っているものですが、それゆえに修正しにくく、知らないうちに差別や偏見を生み出していることもあります。

子どものいじめについても、いじめ加害者のステレオタイプの認知が原因で起こっているケースが少なくありません。

自分のステレオタイプに気づくことは難しいものなので、家族や友人が過剰にステレオタイプな物の見方をしていて、それが社会生活を送る上でネックになっているようなら、タイミングを見て指摘してあげましょう。

特に、子どものうちは、ステレオタイプを身につけやすい時期である一方で、修正しやすい時期でもあるので、積極的に関わってあげてください。

社会心理学の傍観者効果とは?原因と事例は?いじめを防ぐ対策は?

心理学用語 心理学用語-傍観者効果

いじめが社会問題としてニュースなどで取り上げられるようになって久しく、国や自治体が法整備や教育現場の改善を進めてはいるのですが、いじめに関するニュースは後を絶ちません。

ニュースで取り上げられるいじめは氷山の一角なので、実際にははるかに多くの子どもがいじめ被害に悩んでいるでしょう。

いじめはなぜ起こり、なぜなくならないのか?

そうしたいじめの原因やメカニズムを考える上で、社会心理学の傍観者効果は一つの視点を提供してくれるものです。

この記事では、社会心理学の傍観者効果の原因と事例、いじめを防ぐ対策について紹介します。

社会心理学の傍観者効果とは

傍観者効果とは、他人に対して手を差し伸べる(援助する)べき状況において、周囲に自分以外の人がいることで援助が抑制される現象です。

傍観者効果は、心理学における集団心理の一つで、周囲にいる人が少ないほど援助行動を起こしやすく、周囲の人が多いほど援助行動が抑制される傾向があることが分かっています。

英語では、「bystander effect」と表記されます。

  • 集団心理:集団(人の集まり)によって形成、維持される思考や意思などのこと。集団に所属する個人の意思とは必ずしも一致せず、集団が大きいほど過激な心理が生まれることがある。

傍観者効果の事例と実験

傍観者効果には、心理学の世界では有名な事例(事件)と実験があります。

傍観者効果の事例:キティ・ジェノヴィーズ事件

傍観者効果の事例として有名なのが、ニューヨーク州で1964年に起きた殺人事件です。

事件の大まかな流れは、次のとおりです。

  1. 事件当日の深夜、被害者の女性キティ・ジェノヴィーズが、帰宅途中の路上において、男性に背中をナイフで刺されて悲鳴を上げる
  2. 付近の住民38人が悲鳴に気づき、そのうちの一人が部屋の明かりをつけて窓を開け、大声で制止する
  3. 犯人の男性は、一旦、自分の車まで戻るが、大声を上げた男性の部屋の明かりが消えると、再びキティをナイフで刺す
  4. キティが再び悲鳴を上げると、再び部屋の明かりがつく
  5. 犯人の男性は、一旦、車に戻って立ち去ったが、再びキティのところへ戻り、ナイフで刺す
  6. 誰も助けに来ないまま、キティは亡くなる

事件直後は、都会人の冷淡さを象徴する事件として話題になりました。

傍観者効果の実験:ビブ・ラタネとジョン・ダーリーの実験

キティ・ジェノヴィーズ事件に興味を持ち、傍観者効果の実験を行ったのが、心理学者のビブ・ラタネとジョン・ダーリーです。

2人は、事件について「多くの住民が気付いたからこそ、誰もキティを助けようとしなかった。」という仮説を立て、それに基づいた実験を行いました。

実験の内容は、次のとおりです。

  1. 被験者の学生を2人、3人、6人の班に分け、それぞれに班の人数を教える
  2. 一人ずつ個室に入れ、実験者は廊下で待機することを伝える
  3. マイクとインターフォンを使い、班ごとに討議をすることを説明する(実際は討議場面の録音を聞かせる)
  4. 班員の一人が発作を起こして助けを求める内容の録音を聞かせる
  5. 被験者の学生が援助行動を起こすかどうか、援助行動を起こすまでの時間を調べる

実験の結果、2人班だと言われた学生は、全員が実験者に報告したのに対して、6人班だと言われた学生は、約60%しか報告せず、報告した場合も時間がかかりました。

つまり、「2人班だと言われた学生=班員が発作を起こしたのを知っているのは自分しかいないと思った学生」は素早く援助行動を起こし、一方の「6人班の学生=自分以外にも発作を知っている人がいると思った学生」は、援助行動を抑制する傾向があることが分かったのです。

ラタネとダーリーは、この実験結果を踏まえ、キティ・ジェノヴィーズ事件について、「都会人の冷淡さが招いた事件ではなく、多くの住民が気付いた(他の住民も気づいただろうと思った)ために起きた事件」だと主張しました。

その結果、キティ・ジェノヴィーズ事件は、傍観者効果の代表的な事例として世界的に知られるようになりました。

傍観者効果の原因

傍観者効果の原因は、人の3つの考え(多元的無知、責任の分散、評価に対する懸念)によって起こります。

  • 多元的無知:他人が積極的に行動しないことで、深刻かつ緊急な状況ではないと考え(周りの空気を読む)
  • 責任の分散:他人と同調することで、責任や避難が分散されるという考え(責任を回避したい)
  • 評価に対する懸念:行動した結果に対して、他人から非難されるのではないかという考え(行動することで非難されたくない)

周囲の人が多いほど、こうした考えを強く抱いて、自発的な行動が抑制される傾向があります。

いじめと傍観者効果

傍観者効果は、いじめを助長する原因としても注目されています。

いじめの問題は、何かといじめ加害者と被害者の性格や資質などが注目されがちですが、いじめを傍観している子どもの存在も大きな影響を及ぼしています。

いじめ行為を目撃した子どもの多くは、次のように考えます。

「他の友人も知っているけど止めないから、大したことではないんだ。(多元的無知)」

「(いじめ被害を受けている子どもは)嫌がっているけど、他の友人も何もしないし、自分も何もしなくていいだろう。(責任の分散)」

「いじめを止めたら、一人だけいいカッコしてと言われるかもしれないし、いじめの標的にされるかもしれない。(評価に対する懸念)」

そして、いじめ行為を見て見ぬふりをするか、ばあいによっては「みんないじめているから大丈夫」と考えて、いじめに加担することもあります。

その結果、いじめは一段と深刻化しますし、先生はクラス内のいじめに気付くのが遅れ、深刻な事態を招いてしまうことになります。

傍観者効果によるいじめを防ぐ対策

傍観者効果の原因となる人の考え方は、多くの人が多かれ少なかれ持っているもので、そう簡単に変えることはできません。

そのため、教師やパパママが傍観者効果について理解を深め、学校でも起こりうる現象であることを認識して、事態が深刻化する前に食い止めることが大切になります。

まずは、子どもを学校任せにすることなく、できる限り担任と連絡を取り合って学校内における子どもの様子を確認し、少しでも気になることがあれば、放置せず家族で話し合ったり学校に相談したりして対応することです。

いじめ加害者といじめ被害者はそれぞれ個人であったとしても、いじめ行為は集団の中で起こる現象であり、周りにいる子どもも少なからず影響を与えています。

そのため、いじめが起こった場合、加害者を叱りつけて終わるのではなく、いじめを題材にクラスやPTAなどで話し合う場を持ち、再発防止策をみんなで考えることも欠かせません。

いじめ加害者と被害者だけでなく、いじめを見聞きした人やその保護者も、「自分は関係ない」ではなく「自分も当事者だ」という認識を持ち、傍観者としていじめを放置することの責任を自覚することが重要です。

まとめ

傍観者効果について、いじめと絡めて紹介しました。

傍観者効果は、社会心理学の中でも有名な用語の一つで、ラタネとダーリーの実験が行われたのは数十年前のことですが、今でも心理学の教科書にしっかり載っています。

また、日常生活のいたるところで傍観者効果が発生しています。

学校におけるいじめだけでなく、会社におけるパワハラやセクハラ、ママ友間のトラブルなど、思い当たるところはたくさんあるのではないでしょうか。

アンダーマイニング効果とは?具体例は?子どものやる気を削ぐ原因は?

心理学用語 心理学用語-アンダーマイニング効果

子供に勉強を頑張ってほしいと思ったら、どういう行動をとりますか?

テストで良い点数を取ったら褒めたり、ご褒美をあげたりするのではないでしょうか?

こうした方法は、勉強に対する子どものモチベーションを高めるためによく使われる方法です。

しかし、逆効果になってしまう場合もあります。

つまり、褒めれば褒めるほど、ご褒美をあげればあげるほど、勉強への意欲を失い、学業成績が下がることがあるのです。

こうした現象を、心理学の世界ではアンダーマイニング効果と呼びます。

多くのパパママは、子どもの教育における「褒めること」の大切さは理解しており、「褒め方」にも気を配っています。

褒めたりご褒美をあげたりするのもその一環です。

しかし、怒ることに比べると「褒めることのデメリット」には目が向きにくいところがあり、褒めることで子どもがやる気を失っているとは気づかずに褒め続けたり、我慢できずに怒ったりしてしまいがちです。

アンダーマイニング効果は何が原因で起こり、また、どうすれば解消できるのでしょうか?

この記事では、アンダーマイニング効果の概要と具体例、原因、対応について紹介します。

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果とは、内発的に動機づけられた(自分でやる気になっていた)行為について、外発的動機づけを行った(褒めたり、ご褒美を与えたりした)結果、モチベーションが低くなる現象です。

英語では、「undermining」と表記します。

アンダーマイニング効果は、教育現場や心理学の世界(精神科や心療内科、カウンセリングなど)はもちろん、スポーツ界でも良く知られており、スポーツ選手のメンタルケアやモチベーション管理を行う上で留意されています。

外発的動機づけと内発的動機づけ

心理学の世界における動機づけ(モチベーション)とは、人が行動を起こして目標に向かう過程や、行動の原因となるもののことです。

人の動機づけにはいくつも種類がありますが、アンダーマイニング効果に関係しているのは、外発的動機づけと内発的動機づけの2つです。

外発的動機づけ

外発的動機づけとは、褒められたり、ご褒美を与えられたり、強制されたりすることでもたらされる動機づけです。

いわゆる「受動的な」動機づけで、「飴と鞭による」動機づけと言われることもあります。

外発的動機づけに基づいた行動は、行動自体が目的ではなく、物理的報酬や周囲の評価といった目的に到達するために起こるものです。

具体例としては、いじめられないように立場が強い友人のいうことを聞いたり、欲しい物を買ってもらうために勉強したり、小遣いが欲しくて家事を手伝ったりすることが挙げられます。

一方で、良い高校に入るために受験勉強を頑張ったり、試合に出場するために練習に打ち込んだりすることも外発的動機づけです。

ご褒美や小遣い目当ての外発的動機づけと比べると、自発性が高いと言えます。

内発的動機づけ

内発的動機づけとは、本人の興味関心からもたらされる動機づけです。

外発的動機づけのようにご褒美や罰に関係なく自発的に起こる「能動的な」動機づけです。

具体例としては、大好きなスポーツに熱中したり、特定の勉強が好きでたまらず打ち込んだりすることが挙げられます。

個人差はありますが、楽しさ、充実感、知的好奇心、課題を達成した時の有能感などが内発的動機づけを起こす要因となっています。

外発的動機づけと内発的動機づけの差

外発的動機づけか内発的動機づけかによって、行動の集中、効率、継続性に差が生じます。

  • 集中:内発的動機づけに基づく行動の方が、外発的動機づけに基づく行動よりも高い集中力を発揮できる傾向がある
  • 効率:内発的動機づけに基づく行動の方が、外発的動機づけに基づく行動よりも効率が良い傾向がある
  • 継続性:内発的動機づけに基づく行動の方が、外発的動機づけに基づく行動よりも継続できる傾向がある

例えば、自発的に勉強する方が、ご褒美につられて勉強するよりも集中できますし、自分なりの勉強方法で効率的に進め、途中で投げ出さずにやりきることができます。

アンダーマイニング効果の具体例

アンダーマイニング効果の具体例をいくつか挙げてみます。

  • とにかく勉強が好きで毎日勉強していたら、親がご褒美をくれるようになり、意欲が低下した
  • パパママの手伝いをしたくて風呂掃除や食器洗いをしていたら、親が小遣いをくれるようになり、小遣いをもらえないと家事を手伝わなくなった
  • 被災地の人を助けたくてボランティア活動に参加したら、やたら褒められて報酬も渡されたので、後ろめたさを感じて参加しなくなった

いずれの例も、前段は、報酬や罰とは無関係に、好奇心、達成感、充実感を得たい気持ち(内発的動機づけ)からもたらされた自発的な行動です。

一方で、後段は、内発的動機づけによって起きた行動に対して報酬(外発的動機づけ)が与えられたことで、意欲を喪失・低下させたり、外発的動機づけなしには行動しなくなったりしています。

アンダーマイニング効果の原因

アンダーマイニング効果が生じる原因は、内発的動機づけによる行動に対して、不用意に報酬や罰を与えることです。

特に子どもは、自発的な行動に対して、過剰な褒め言葉やご褒美(報酬)を与えられると、そればかりに目が向いてしまい、報酬のために行動したり、報酬がないと行動しなくなったりしやすい傾向があります。

達成感や充実感を得るという純粋な動機づけに基づく行動が、いつのまにか報酬目当てに代わってしまうのです。

その結果、行動に対する集中力、行動の効率や継続性が低下し、自発的な行動も鳴りを潜めてしまいます。

また、報酬に対する要求ばかりが高まり、思うような報酬が得られないとやる気をなくして、より一段と自発的な行動がなくなります。

パパママとしては良かれと思ってした行動が、子どもに深刻な影響を与えてしまうことになり、強い後悔の念にさいなまれることも少なくありません。

子どもがアンダーマイニング効果に陥らないために

褒めることやご褒美は、子どものモチベーションを高めるための有効な方法であることは間違いありません。

トークンエコノミーなど、報酬を与えることで子どもの行動を変える方法も存在するように、報酬によってやる気を出し、内発的動機づけを高める子どもはたくさんいます。

また、良い高校に入るために受験勉強に励む場合のように、外発的動機づけによって健全な行動が起こることも少なくありません。

そのため、子どもをアンダーマイニング効果に陥らせないために大切なのは、子どもの行動が内発的動機づけに基づくものか、外発的動機づけに基づくものかを慎重に判断し、報酬を与えるタイミングと量を見極めることです。

こうしたことは、どの子どもにも当てはまる答えがあるわけではなく、日々の生活の中で子どもの能力、個性、性格などを把握しながら、試行錯誤を続ける以外にありません。

まとめ

アンダーマイニング効果について紹介しました。

近年、心理学の世界で使われていた言葉が次々と一般社会に溶け込むようになっていますが、アンダーマイニング効果も近いうちに身近な言葉になる可能性があります。

すでに、教育現場ではおなじみになっており、学校における教師の生徒に対する関わり方の中にも取り入れられているところがありますし、ペアレントトレーニングをはじめとする親教育のプログラムにも登場することもあります。

家庭においても、アンダーマイニング効果を意識した子どもへの関わり方を考えてみてはどうでしょうか。

社会的ジレンマとは?具体例は囚人のジレンマ?対策・解決策は?

心理学用語 心理学用語-社会的ジレンマ

社会的ジレンマという言葉を知っていますか?

私たちが日常生活を送っている社会では、個人にとっては合理的で利益の出る選択が、社会にとっては良くない結果を招くことや、その逆のことがたくさんあります。

そうした現象を示す言葉の一つが「社会的ジレンマ」です。

社会的ジレンマという言葉よりも、囚人のジレンマやコモンズの悲劇など社会的ジレンマに関する実験や理論の方が有名になっているので、そちらを知っている人も多いかもしれません。

社会的ジレンマは、個人が集団の中で生活する中で避けて通れないものです。

この記事では、社会的ジレンマの概要と具体例(囚人のジレンマ、コモンズの悲劇)、対策と解決策について紹介します。

社会的ジレンマとは

社会的ジレンマとは、個人の利益を最大化する(個人にとっての合理的な)選択と、社会や集団の利益を最大化する(社会や集団にとっての合理的な)選択が不一致もしくは衝突する場合に生じるジレンマ(葛藤)のことです。

社会生活においては、ある社会や集団に所属する全員が協力することで、全員が一定の利益を得ることができる仕組みが整っています。

例えば、法律(刑法、民法、道路交通法など)、社則、校則などのルールを全員が守ることで、一定の安全安心な生活を送ることができます。

しかし、通常、個人にとっては、自分だけの利益を追求した方が、社会内(集団内)の全員で協力するよりも大きな利益を得られることが多いものです。

例えば、人の物を盗めばタダで欲しい物が手に入りますし、無賃乗車をすればタダで目的地まで行くことができるので、個人にとっては合理的な選択だと言えます。

では、社会内(集団内)の全員が協力せず、個人の利益を追求するとどうなるでしょうか。

全員が協力した場合よりも良くない結果が、全員に降りかかることになります。

例えば、あらゆる人が物を盗むようになれば、貨幣経済が成立しなくなりますし、全員が他人に対して疑心暗鬼になり、互いに監視しあう殺伐とした社会になります。

まとめると、次のようになります。

  • 自分だけの利益を追求して得られる利益>社会内の全員が協力して得られる利益>社会内の全員が自分だけの利益を追求して得られる悪い結果

 

つまり、「本音では、自分だけの利益を追求したい。でも、全員が自分だけの利益を追求した場合の悪い結果を考えると、協力した方が良いかもしれない。」というジレンマに陥るのです。

社会的ジレンマの具体例(囚人のジレンマ、コモンズの悲劇)

社会的ジレンマの具体例としては、囚人のジレンマとコモンズの悲劇という実験が有名です。

社会的ジレンマの具体例1:囚人のジレンマ

囚人のジレンマとは、他人の選択によって自分の利益に違いが生じる状況下で、2つの選択肢を与えられた場合に生じるジレンマです。

囚人のジレンマは、個人にとって最適な選択が、全体としてみると最適な選択にならないことを示す、典型的な例です。

この実験では、他人と協力した方が、協力しないよりも良い結果が得られることが明白な場合でも、協力しない人が利益を得ることが分かる状況下では、他人と協力しなくなるという結果が得られています。

囚人のジレンマ実験の内容は、次のとおりです。

  1. ある犯罪を起こした犯人2人が警察に逮捕される
  2. 犯人2人は、別々に取り調べを受けた後、検察官に送致される
  3. 検察官が、犯人(囚人)2人対して、次の3つの内容を伝える
  • 2人とも黙秘した場合は、2人とも懲役2年にする
  • 2人のうち1人だけが自白した場合は、自白した1人は釈放し、自白しなかった1人は懲役10年にする
  • 2人とも自白した場合は、2人とも懲役5年にする

客観的に見ると、犯人2人にとっては、互いに黙秘して懲役2年となる方が、2人とも自白して懲役5年となるより良いということが分かります。

しかし、囚人のジレンマ実験では、犯人2人は互いに自分の利益のみを追求し、2人とも自白して懲役5年を受ける結果になっています。

犯人の思考回路は、次のとおりです。

  • 相手が黙秘した場合、自分も黙秘すると2人とも懲役2年になるが、自白すれば釈放される
  • 相手が自白した場合、黙秘すると自分だけが懲役10年となるが、自白すれば2人とも懲役5年で済む

つまり、犯人2人はいずれも、「相手が黙秘しても自白しても、自分にとっては自白した方が利益がある。」と考えて自白したのであり、そこに相手と協力するという発想はありませんでした。

社会的ジレンマの具体例2:コモンズ(共有地)の悲劇

コモンズの悲劇とは、だれでも自由に利用できる共有資源が、個人が利益を追求して際限なく利用することで枯渇する現象です。

英語では「Tragedy of the Commons」と表記され、共有地の悲劇と訳されることもあります。

コモンズの悲劇の具体例としてよく用いられるのが、共有の牧草地です。

  1. 共有の牧草地に、畜産農家が牛を放牧する
  2. 畜産農家は自分の利益を追求し、共有の牧草地にできるだけ多くの牛を放牧する
  3. 牛が牧草を食べ尽くしてしまい、畜産農家全体が打撃を受ける

自分の所有地に牛を放牧する場合は、牛が牧草を食べ尽くさないよう放牧する牛の数を調整します。

しかし、共有の牧草地の場合、自分が放牧する牛を増やさないと、他の畜産農家がたくさん牛を放牧し、結果として自分の取り分が減ってしまいます。

そのため、全ての畜産農家が我先にと牛をたくさん放牧し、コモンズの悲劇を招くのです。

社会的ジレンマの具体例3:いじめ

日常生活の中でも、いたるところで社会的ジレンマは起きています。

例えば、学校生活の中で起こる社会的ジレンマの具体例としては、いじめを挙げることができます。

いじめとは、「児童や生徒に対して、同じ学校の他の児童・生徒が行う、心理的または物理的な影響を与える行為で、行為を受けた児童・生徒が心身の苦痛を感じているもの(いじめ防止対策推進法)」です。

クラスの中で特定の生徒がいじめ加害者といじめ被害者になっている場合、その他の生徒が介入していじめを止めることが、いじめ解消というクラス全体としての利益をもたらします。

しかし、多くの生徒が「口を出したら、次は自分がいじめられるかもしれない。」などと考えていじめを傍観し続けるというのが、日本の学校における現状です。

つまり、「いじめを受けない」という個人にとっての利益を追求して、いじめを止めずに傍観し、結果、クラス全体の雰囲気が悪くなったり、いじめの被害が拡大したりすることになるのです。

社会的ジレンマの対策・解決策

社会的ジレンマの問題は、社会や集団に所属する人が多くなるほど、解決が難しい深刻な問題として降りかかってきます。

社会的ジレンマの対策・解決策として考えられるのは、第1に社会や集団に所属する人が、協力して全体として良い選択ができるよう、話し合うことです。

社会や集団が大きい場合は、班単位、クラス単位、学年単位というようにまずは細かい単位で話し合い、それを統合していくことになります。

具体例で挙げたいじめの場合を考えると、第1歩は、クラス内にいじめが存在することを、誰かが公にすることです。

クラス内で話題に出したり、先生や家族に相談したりして、問題提起することです。

その上で、どうすればいじめ問題を解決できるのかについて、生徒、先生、保護者、学校が協力して話し合いを進め、個人としての利益も考えながら、全体として良い解決方法を模索していくことになります。

まとめ

社会的ジレンマについて紹介しました。

社会的ジレンマは、いじめをはじめ教育現場でもいたるところで見られる現象ですし、友達、家族、塾、習いごとなど、より小さな社会においても起こることがあります。

日常生活を送る中で、「あ、今、社会的ジレンマに陥っているな。」と意識することはそれほど多くないと思いますが、知識として持っておくことで、学校や家庭の問題を解決する糸口にできることがあります。

古典的・レスポンデント条件付けとオペラント条件付けとは?違いと例は?

心理学用語 心理学用語-条件付け

古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とオペラント条件付けは、いずれも学習に関する心理学用語で、子どもの学習方法の進化にも大きな影響を与えています。

しかし、そもそも言葉を知らない人が多く、また、言葉は知っていても「違いは?」、「それぞれの具体例は?」と聞かれてパッと答えられる人はあまりいません。

この記事では、古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とオペラント条件付けの概要、2つの条件付けの違いと具体例について紹介します。

古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とは

古典的条件付けとは、中性刺激と無条件刺激を繰り返し対呈示することで、中性的な刺激によって生理的反射を引き起こすようにすることです。

  • 生理的反射(無条件反射):生き物が本来持っている反応
  • 生理的刺激:生理的反射を引き起こす刺激
  • 中性刺激:無条件反射を引き起こさない刺激

英語では、「Classical conditioning」もしくは「Pavlovian conditioning」と表記し、パブロフ型条件付けやレスポンデント条件付けと訳されることもあります。

古典的条件付けの具体例(「パブロフの犬」)

古典的条件付けの具体例としては、「パブロフの犬」という実験が有名です。

「パブロフの犬」実験は、ソビエト連邦(現ロシア)の生物学者イワン・パブロフが行った実験です。

実験内容は、次のとおりです。

犬は生まれつき「唾液を分泌する」という生理的反射を持っている前提で、内容を確認してください。

  1. 犬に特定の音(中性刺激)を聞かせる(メトロノームだと言われている)
  2. 犬に餌を与える(生理的刺激)
  3. 1.~2.を繰り返す
  4. 犬は、特定の音を聞いただけで唾液を出すようになる

1.~2.の過程が条件付けです。

条件付けが完成後は、犬の唾液を引き起こす特定の音を「条件刺激」、唾液を閔妃つすることを「条件反応」と呼びます。

つばの分泌が無意識的に調節されている点において、通常の学習とは異なっています。

オペラント条件付けとは

オペラント条件付けとは、特定の自発的な行動をした時に、報酬(正の強化刺激)や罰(負の強化刺激)を与えることで、その行動を強化もしくは弱化させることです。

オペラントとは、オペラント条件付けを体系的に研究したアメリカの心理学者バラク・フレデリック・スキナーが、自発的に行動するという意味の「operate」をもじって造った言葉です。

  • 正の強化刺激:オペラント行動(自発的な行動)の出現頻度を高める刺激
  • 負の強化刺激:オペラント行動の出現頻度を低める刺激
  • 強化:オペラント行動の出現頻度が高まること
  • 弱化:オペラント行動の出現頻度が低まること

英語では、「operant conditioning」もしくは「instrumental conditioning」と表記されます。

オペラント条件付けは、心理学の領域にとどまらず、運転などのスキルトレーニング、アルコールや薬物などの治療、発達障害の子どもの療育、リハビリといった分野で現在も応用されています。

オペラント条件付けの具体例(「スキナー箱」)

オペラント条件付けの具体例としては、「スキナー箱」という実験が有名です。

「スキナー箱」実験は、オペラントの名付け親であるスキナーが行った実験で、内容は次のとおりです。

  1. スキナー箱(レバーを押すと餌が出てくる仕組みが設けられた箱)を準備する
  2. スキナー箱に、食事を与えていないネズミを入れる
  3. ブザーが鳴った時にレバーを押すと餌を与えるようにする
  4. ネズミは、ブザーの音を聞くとレバーを押すようになる

スキナー箱は、オペラント行動の出現頻度を高める正の強化の例です。

古典的条件付けとオペラント条件付けの違い

古典的条件付けとオペラント条件付けの基本を確認したので、次は2つの条件付けの違いについて見ていきましょう。

古典的条件付けとオペラント条件付けの違い1:受動か能動か

古典的条件付けは、パブロフの犬実験に代表されるように「受動的な」条件付けです。

パブロフの犬以外では、梅干しの例が有名です。

最初は、梅干しを見ただけでは唾液は分泌されず、梅干を食べた時に唾液が分泌されますが、食べ続けるうちに梅干を見ただけで唾液が出るようになります。

一方のオペラント条件付けは、「能動的な」条件付けです。

スキナー箱の実験では、ネズミの自発的な行動に対して報酬を与えることで、その行動の出現頻度を上げていました。

他にも、子供がテストで良い点数を取ったらご褒美をあげることで、子どもの勉強する頻度を高めるというのもオペラント条件付けです。

このように、オペラント条件付けは、報酬や罰によって、人や動物の能動的な行動の出現頻度を高めたり低めたりします。

古典的条件付けとオペラント条件付けの違い2:随意か不随意か

古典的条件付けによる行動は、元々は生き物が本来的に持っている反射によって引き起こされる、不随意(自分の意思ではコントロールできない)反応です。

例えば、パブロフの犬実験において犬が唾液を分泌するのは、不随意反応です。

一方で、オペラント条件付けによる行動は、元々持っている反射とは関係なく、生き物が自発的に行う随意反応です。

スキナー箱実験において、ネズミはレバーを押すのは随意反応です。

オペラント条件付けと学校教育(オペラント教育)

オペラント教育とは、子どもの自主的・自発的な行動を尊重しながら、オペラント条件付けの理論や方法を活用して、子どもの良い行動を伸ばし、悪い行動を減らしていく教育です。

オペラント条件付けを活用した教育をまとめてオペラント教育と呼ぶことがあるのです(まだ、一般的に浸透した呼び方とまでは言えません。)。

例えば、生徒がテストで良い点を取ったり、困っているクラスメイトを助けたりしたらたくさん褒め、より勉強したり、クラスメイトに優しく接したりするよう促します。

一方で、クラスメイトを叩いたり、教室内の物を壊したりしたら見逃さずに指導し、暴力を止め、落ち着いて行動することを覚えさせます。

オペラント条件付けを活用した教育は、家庭においても手軽に実践できるもので、実際に家庭向けの教育プログラムも開発されています。

オペラント条件付けを活用した教育プログラム(治療プログラム)

  • シェイピング法:一定の行動を獲得させるために、行程をスモールステップに分けて成功体験を積ませながら、最終的に目標とする行動を獲得させるプログラム
  • トークンエコノミー法:子どもが特定の良い行動をした時に、ご褒美を与えて強化するプログラム
  • ペアレントトレーニング:発達障害の子どもを持つパパママを対象とした、子どみの好ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためのテクニックを、パパママが身につけるためのプログラム

まとめ

古典的条件付けやオペラント条件付けの考え方が示されたのは数十年前ですが、心理学の世界や教育現場では、今でも基礎的な知識として学ばれています。

また、条件付けに基づいた治療プログラムや教育プログラムも次々に開発されており、子どもの知育や教育を考える上で知っておきたい知識の一つです。

特に近年、オペラント条件付けを活用した、発達障害の子どもに対する教育プログラムや、発達障害の子どものパパママに対するペアレントトレーニングが注目を浴びるようになっているので、発達障害の子どもを育てるパパママには、ぜひ知っておいてもらいたいところです。

マインドフルネスとは?瞑想?効果とやり方は?危険はあるの?

心理学用語 心理学用語-マインドフルネス

マインドフルネスを知っていますか?

マインドフルネスは、心理学の世界では数十年前から知られており、心理療法の一つとして、マインドフルネス認知療法や、認知療法の枠組みに瞑想を取り入れたマインドフルネス低減法が実践されてきたものです。

近年、テレビや雑誌で取り上げられたことで一気に世間の注目を集め、街中で関連書籍や講座の案内を目にすることが増えてきました。

しかし、「マインドフルネスって何?」という人がたくさんいますし、「マインドフルネス=マインドコントロール」だと勘違いしている人もいます。

また、Googleがマインドフルネスを取り入れているという情報を得て、誰にでも効果があると誤解したり、不適切なやり方で実践したりしている人もいるのが現状です。

この記事では、マインドフルネスの概要と効果、マインドフルネスの正しいやり方、デメリットや危険について紹介します。

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、「今、この瞬間」の自分の内的・外的体験に注意を集中させて、現実をありのままに受け入れることです。

「今、この瞬間」の自分に注意を向けて、自分の心と身体の状態に気づくこととも言えます。

認知療法に瞑想を取り入れた(統合させた)方法ですが、宗教色は取り払われています。

マインドフルネスの科学的・学術的発展、実践の有効性・安全性を向上を目的として設立された日本マインドフルネス学会は、マインドフルネスを次のように定義しています。

本学会では、マインドフルネスを、“今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること” と定義する。
なお、“観る”は、見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、さらにそれらによって生じる心の働きをも観る、という意味である。

日本マインドフルネス学会(http://mindfulness.jp.net/concept.html)

人は、強いストレス状況下に置かれると、目の前のネガティブな状況にとらわれて余裕をなくし、心の柔軟性も失われてしまいます。

マインドフルネスを実践することで、ストレス状況下でもネガティブな気持ちに飲み込まれてしまわず、普段どおりの自分を取り戻し、心に余裕を持つことを目指します。

近年、マインドフルネスは、心理学の世界だけで治療に取り入れられる機会が増えていますし、メディアの影響で社会一般に浸透したことで、関連書籍や民間講座もたくさん登場しています。

しかし、マインドフルネスの伝播を推し進める人が、その有効性に関する研究結果を次々に発表する一方で、マインドフルネスを実践したことで悪影響を受けたと主張する人もいます。

今後も賛否の主張は継続するはずですが、実践するにあたっては、①他の心理療法と同様、万人に効果がある方法ではないことを理解し、②正しいやり方で実践することを心がけましょう。

マインドフルネスの効果

マインドフルネスの効果については、たくさんの研究結果が発表されています。

代表的な効果は、次のとおりです。

それぞれ、海外の専門誌で紹介されているマインドフルネスの効果の抜粋です。

リンクを貼っていますので、興味がある人は覗いてみてください。

マインドフルネスのやり方

マインドフルネスのやり方は一つではありません。

有名なやり方を紹介するので、自分に合ったやり方を探してみてください。

いずれのやり方でも共通しているポイントは、呼吸や五感に集中することです。

マインドフルネスのやり方0:環境を整える

マインドフルネスによって「今、この瞬間」をありのままに感じるには、まず、環境を整えることが大切です。

ポイントは次の3つです。

  • 気持ちが落ち着き、かつ、雑音や雑念を抱かせる物が少ない場所
  • 一人になる
  • 身体を締め付けないリラックスした服装

マインドフルネスのやり方1:呼吸を意識する1

  1. 座禅を組んで背筋を伸ばす(背筋を伸ばしていれば、椅子に座ったり、立ったりしても良い)
  2. 合掌する(両手を胸の前で合わせる)
  3. ゆっくりと鼻から息を吸い込みながら、合掌した手を正中線をたどるように持ち上げる
  4. 合掌した手を頭の上に挙げた状態で、下腹部にキュッと力を入れて息を止める(息を身体全体に巡らせるイメージ)
  5. ゆっくりと息を吐きながら、両手を広げて下ろす

1日1回、1.~4.の手順を5分くらい繰り返します。

マインドフルネスのやり方2:呼吸を意識する2

  1. 座禅を組んで背筋を伸ばす(背筋を伸ばしていれば、椅子に座ったり、立ったりしても良い)
  2. 身体を左右に揺すり、まっすぐになる位置で止まる
  3. 肩の力を抜き、軽く目を閉じる
  4. 顔の力を抜く
  5. ゆっくりと呼吸する
  6. 室内の空気の動き、部屋の広さや明るさ、物の配置などに注意を広げ、ありのままを感じる
  7. まぶたの裏に注意を集中させて、ゆっくり目を開く

5.では、①息を吸い込むとお腹や肺が膨らみ、息を吐くとお腹や肺がへこむのをありのままに感じることと、吸った息が身体全体に行き渡るようなイメージを持つことがポイントです。

1日1回、1.~6.の手順を10分くらい繰り返します。

マインドフルネスのやり方3:感じたことを口にする

  1. 座禅を組んで背筋を伸ばす(背筋を伸ばしていれば、椅子に座ったり、立ったりしても良い)
  2. 五感で感じたことをありのままに口に出していく

視覚の場合は、焦点を合わせず周囲をぼんやりと見渡すようにして、「床が見える」、「自分の手が握った手が見える」、「窓の外に太陽と組が見える」というように、ひたすら見えた物について口に出します。

聴覚の場合は、目を閉じて、「床がきしむ音が聞こえる」、「お腹の鳴る音が聞こえる」、「電車が走る音が聞こえる」というように、ひたすら聞こえた音について口に出します。

触覚の場合も、目を閉じて、「床の冷たさを感じる」、「吹き込む風が頬に当たるのを感じる」、「メガネのつるが耳に触れているのを感じる」というように、ひたすら肌で感じたことについて口に出します。

このように、五感に注意を集中させて、感じたことをありのままに口に出すことで、心をがんじがらめにしていたストレスや不安から解き放たれて、意識の焦点を「今」に合わせることができます。

マインドフルネスのデメリットや危険

マインドフルネスは、正しいやり方で実践すれば、心の余裕を取り戻すだけでなく、意思決定力や記憶力を高めるといった効果も期待できます。

一方で、「「今、この瞬間」の自分の内的・外的体験に注意を集中させて、現実をありのままに受け入れる」ことができず、ストレス源や悩みにばかり注意が向いてしまうと、かえって心がかき乱されて混乱してしまうことがあります。

特に、心療内科や精神科で診断がつくような心理状態で、マインドフルネスの知識や正しいやり方が乏しいまま単独で実践し続けると、取り返しのつかない症状に陥る危険もあります。

また、マインドフルネスは、あくまで心を整えるための方法のひとつであり、誰の心でも癒せるような万能の治療薬ではありません。

過剰な期待を持って取り組むと、思ったような効果が得られないと落ち込み、かえって無力感や不全感を抱く結果になることもあるので、注意してください。

まとめ

マインドフルネスについて紹介しました。

次々にマインドフルネスの有効性を示す研究結果が発表され、心理臨床の現場でも取り入れられるなど勢いがありますが、過信しすぎず、正しいやり方で実践しましょう。