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知育ノート

赤ちゃん、幼児、子供の力を伸ばす知育、知育玩具、関わり方やそれらに関する知識を紹介しています。

社会心理学の傍観者効果とは?原因と事例は?いじめを防ぐ対策は?

心理学用語 心理学用語-傍観者効果

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いじめが社会問題としてニュースなどで取り上げられるようになって久しく、国や自治体が法整備や教育現場の改善を進めてはいるのですが、いじめに関するニュースは後を絶ちません。

ニュースで取り上げられるいじめは氷山の一角なので、実際にははるかに多くの子どもがいじめ被害に悩んでいるでしょう。

いじめはなぜ起こり、なぜなくならないのか?

そうしたいじめの原因やメカニズムを考える上で、社会心理学の傍観者効果は一つの視点を提供してくれるものです。

この記事では、社会心理学の傍観者効果の原因と事例、いじめを防ぐ対策について紹介します。

社会心理学の傍観者効果とは

傍観者効果とは、他人に対して手を差し伸べる(援助する)べき状況において、周囲に自分以外の人がいることで援助が抑制される現象です。

傍観者効果は、心理学における集団心理の一つで、周囲にいる人が少ないほど援助行動を起こしやすく、周囲の人が多いほど援助行動が抑制される傾向があることが分かっています。

英語では、「bystander effect」と表記されます。

  • 集団心理:集団(人の集まり)によって形成、維持される思考や意思などのこと。集団に所属する個人の意思とは必ずしも一致せず、集団が大きいほど過激な心理が生まれることがある。

傍観者効果の事例と実験

傍観者効果には、心理学の世界では有名な事例(事件)と実験があります。

傍観者効果の事例:キティ・ジェノヴィーズ事件

傍観者効果の事例として有名なのが、ニューヨーク州で1964年に起きた殺人事件です。

事件の大まかな流れは、次のとおりです。

  1. 事件当日の深夜、被害者の女性キティ・ジェノヴィーズが、帰宅途中の路上において、男性に背中をナイフで刺されて悲鳴を上げる
  2. 付近の住民38人が悲鳴に気づき、そのうちの一人が部屋の明かりをつけて窓を開け、大声で制止する
  3. 犯人の男性は、一旦、自分の車まで戻るが、大声を上げた男性の部屋の明かりが消えると、再びキティをナイフで刺す
  4. キティが再び悲鳴を上げると、再び部屋の明かりがつく
  5. 犯人の男性は、一旦、車に戻って立ち去ったが、再びキティのところへ戻り、ナイフで刺す
  6. 誰も助けに来ないまま、キティは亡くなる

事件直後は、都会人の冷淡さを象徴する事件として話題になりました。

傍観者効果の実験:ビブ・ラタネとジョン・ダーリーの実験

キティ・ジェノヴィーズ事件に興味を持ち、傍観者効果の実験を行ったのが、心理学者のビブ・ラタネとジョン・ダーリーです。

2人は、事件について「多くの住民が気付いたからこそ、誰もキティを助けようとしなかった。」という仮説を立て、それに基づいた実験を行いました。

実験の内容は、次のとおりです。

  1. 被験者の学生を2人、3人、6人の班に分け、それぞれに班の人数を教える
  2. 一人ずつ個室に入れ、実験者は廊下で待機することを伝える
  3. マイクとインターフォンを使い、班ごとに討議をすることを説明する(実際は討議場面の録音を聞かせる)
  4. 班員の一人が発作を起こして助けを求める内容の録音を聞かせる
  5. 被験者の学生が援助行動を起こすかどうか、援助行動を起こすまでの時間を調べる

実験の結果、2人班だと言われた学生は、全員が実験者に報告したのに対して、6人班だと言われた学生は、約60%しか報告せず、報告した場合も時間がかかりました。

つまり、「2人班だと言われた学生=班員が発作を起こしたのを知っているのは自分しかいないと思った学生」は素早く援助行動を起こし、一方の「6人班の学生=自分以外にも発作を知っている人がいると思った学生」は、援助行動を抑制する傾向があることが分かったのです。

ラタネとダーリーは、この実験結果を踏まえ、キティ・ジェノヴィーズ事件について、「都会人の冷淡さが招いた事件ではなく、多くの住民が気付いた(他の住民も気づいただろうと思った)ために起きた事件」だと主張しました。

その結果、キティ・ジェノヴィーズ事件は、傍観者効果の代表的な事例として世界的に知られるようになりました。

傍観者効果の原因

傍観者効果の原因は、人の3つの考え(多元的無知、責任の分散、評価に対する懸念)によって起こります。

  • 多元的無知:他人が積極的に行動しないことで、深刻かつ緊急な状況ではないと考え(周りの空気を読む)
  • 責任の分散:他人と同調することで、責任や避難が分散されるという考え(責任を回避したい)
  • 評価に対する懸念:行動した結果に対して、他人から非難されるのではないかという考え(行動することで非難されたくない)

周囲の人が多いほど、こうした考えを強く抱いて、自発的な行動が抑制される傾向があります。

いじめと傍観者効果

傍観者効果は、いじめを助長する原因としても注目されています。

いじめの問題は、何かといじめ加害者と被害者の性格や資質などが注目されがちですが、いじめを傍観している子どもの存在も大きな影響を及ぼしています。

いじめ行為を目撃した子どもの多くは、次のように考えます。

「他の友人も知っているけど止めないから、大したことではないんだ。(多元的無知)」

「(いじめ被害を受けている子どもは)嫌がっているけど、他の友人も何もしないし、自分も何もしなくていいだろう。(責任の分散)」

「いじめを止めたら、一人だけいいカッコしてと言われるかもしれないし、いじめの標的にされるかもしれない。(評価に対する懸念)」

そして、いじめ行為を見て見ぬふりをするか、ばあいによっては「みんないじめているから大丈夫」と考えて、いじめに加担することもあります。

その結果、いじめは一段と深刻化しますし、先生はクラス内のいじめに気付くのが遅れ、深刻な事態を招いてしまうことになります。

傍観者効果によるいじめを防ぐ対策

傍観者効果の原因となる人の考え方は、多くの人が多かれ少なかれ持っているもので、そう簡単に変えることはできません。

そのため、教師やパパママが傍観者効果について理解を深め、学校でも起こりうる現象であることを認識して、事態が深刻化する前に食い止めることが大切になります。

まずは、子どもを学校任せにすることなく、できる限り担任と連絡を取り合って学校内における子どもの様子を確認し、少しでも気になることがあれば、放置せず家族で話し合ったり学校に相談したりして対応することです。

いじめ加害者といじめ被害者はそれぞれ個人であったとしても、いじめ行為は集団の中で起こる現象であり、周りにいる子どもも少なからず影響を与えています。

そのため、いじめが起こった場合、加害者を叱りつけて終わるのではなく、いじめを題材にクラスやPTAなどで話し合う場を持ち、再発防止策をみんなで考えることも欠かせません。

いじめ加害者と被害者だけでなく、いじめを見聞きした人やその保護者も、「自分は関係ない」ではなく「自分も当事者だ」という認識を持ち、傍観者としていじめを放置することの責任を自覚することが重要です。

まとめ

傍観者効果について、いじめと絡めて紹介しました。

傍観者効果は、社会心理学の中でも有名な用語の一つで、ラタネとダーリーの実験が行われたのは数十年前のことですが、今でも心理学の教科書にしっかり載っています。

また、日常生活のいたるところで傍観者効果が発生しています。

学校におけるいじめだけでなく、会社におけるパワハラやセクハラ、ママ友間のトラブルなど、思い当たるところはたくさんあるのではないでしょうか。