近年、朝起きられずに遅刻や欠席を繰り返すのに、夜はなかなか寝付けず夜更かしする子どもが増えています。
一見すると怠けているように見えますが、実は、起立性調節障害という病気が原因になっていることがあります。
子どもに起立性調節障害を疑う症状が見られた場合は、早急に小児科を受診させ、適切な治療を受けさせることが大切ですが、同時に、親の子どもに対する関わり方も重要になります。
起立性調節障害の子どもには、親としてどのように関わると良いのでしょうか?
この記事では、子どもが起きない病気(起立性調節障害)に親として向き合う方法について紹介します。
子どもが起きない病気=起立性調節障害とは
起立性調節障害とは、自律神経失調症の一つです。
近年、「朝起きない」という症状や、それに伴って学校の遅刻や欠席を繰り返すことがクローズアップされ、ニュースで取り上げられるなどして注目されるようになりました。
そのため、「子どもが朝起きない病気」というイメージがついていますが、寝つきが悪くなる、めまい、立ちくらみ、ふらつき、失神、食欲不振、集中力の低下など、様々な症状を引き起こすことがあります。
起立性調節障害を発症しやすいのは、小学校高学年から思春期(中学生~高校生頃)の子どもで、男子よりも女子の方が発症しやすい傾向があります。
起立性調節障害を抱える子どもは、日本全国に60~70万人くらいおり、そのうちの8~10万人くらいが日常生活に何らかの支障をきたしていると言われています。
また、周囲から「怠けている」という誤解を受けやすいのも特徴で、周囲の偏見や的外れな注意指導によってストレスをため込み、症状を悪化させたり不登校に陥ったりする子供も少なくありません。
親として、子どもが起きない病気(起立性調節障害)に向き合う方法
親として、起立性調節障害を抱える子どもに向き合う主な方法は、次のとおりです。
- 子どものしんどさを理解する
- 子どもの前でネガティブな感情を出さない
- 子どもの頑張りや変化を褒める
- 起立性調節障害を理解して対応する
- 一定の生活リズムを整えさせる
- 学校と連携する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
子どものしんどさを理解する
起立性調節障害を発症した場合、一番しんどいのは子ども本人です。
例えば、「なぜか分からないけれど、頭痛が酷く、身体もだるくて起き上がれない。」、「朝起きられず登校したくてもできない。」、「夜は早く寝たいのに目がさえて寝付けない」といった悩みを抱えているものです。
しかし、周囲からは「夜更かしするから朝起きられないんだ。」、「怠けているだけだ。」、「どうせ仮病だろう。」と注意指導を受けるか誤解されるばかりで、しんどさを理解してもらえず、心理的・社会的なストレスもため込んでいきます。
親としては、こうした子どものしんどさを理解し、寄り添ってあげる姿勢が大切です。
子どもの前ではネガティブな感情を出さない
親としては、「このまま遅刻や欠席が続いたら留年するかもしれない。」、「ずっと症状が治まらなかったら社会人として自立できないのではないか。」など、子どもの将来について何かと不安や心配が湧いてくるでしょう。
子どもが夜更かししたり、朝起きてこなかったりすると、ついイライラして叱りつけることもあるかもしれません。
しかし、子どもを頭ごなしに叱りつけて無理やり発症前の生活に戻そうとしても、症状が悪化し、家族関係もぎくしゃくしてしまうだけです。
また、子どもの前で不安や心配を表現すると、子どもが親に遠慮して本音を話さなくなったり、自責の念に駆られて落ち込んだりして症状を悪化させてしまいます。
そのため、怒り、不安、心配などネガティブな感情は子どもの前では出さず、どんなに子供の調子が悪くても、平常心でいることを心がけてください。
子どもの変化や頑張りを褒める
子どもが起立性調節障害を発症し、日常生活に支障をきたすようになると、つい子どものネガティブな行動にばかり目がいってしまいます。
これは、学校の先生や生徒、その他子どもを取り巻く人たちも同じです。
つまり、子どもは、家族以外の多くの人から偏見の目で見られたり、的外れな注意指導を受けて傷ついているのです。
そのため、親としては、あえて子どものポジティブな行動に目を向けて、褒める関わりを意識することが大切です。
例えば、遅刻してでも頑張って登校できるようになった、処方薬を自分で管理して飲んだなど、小さなことでも子どもの頑張りや変化を見逃さずに誉めてみましょう。
起立性調節障害を理解して対応する
起立性調節障害の原因や症状をきちんと理解した上で、子どもの状態に応じた対応を身につけて実践することも大切です。
例えば、朝起きられない子どもには、15分間隔で何度も声をかけて起床を促す、子どもの身体を軽く揺する(叩いたり、布団をはがしたり、身体を引っ張ったりはNG)、起床時間になったら窓を開けるといった対応を根気強く続けることが有効です。
子どもが時間どおりに起きられなくても、叱らずに起きてきたことを褒めてあげます。
起きた後は、毎日15分程度の軽めの運動を行う(自律神経を刺激する)、疲れたら椅子に座って休ませる(横にならずにいる時間を増やす)、立っている時は足踏みして血圧が下がるのを防ぐといった行動を促します。
調子が良さそうであれば、遅刻してでも登校させることを検討しますが、くれぐれも無理はさせないようにしましょう。
また、午後11時には布団に入る、部屋を薄暗くする(真っ暗闇にはしない)、柔軟体操で身体をほぐして血行を良くするなど、眠りを促す行動を習慣化させることも重要です。
一定の生活リズムを整えさせる
起立性調節障害を発症すると、それまでの生活リズムがガタッと崩れてしまい、自力で立て直すのが困難になりがちです。
そのため、起きる時間、寝る時間、入浴時間、朝昼夕食の時間を一定にするなど、親が率先して子どもの生活リズムを整えてあげることも大切になります。
子どもの生活リズムを整える上で大切なのは、親の希望を押し付けるのではなく、子どもと一緒にルールを決めて試行し、難しいようなら微調整をくわえるなど、子どもが自発的かつ無理なく実践できるようにすることです。
学校と連携する
起立性調節障害を発症した子どもの多くは、登校したくてもできなくて悩んでおり、遅刻や欠席が増えるほど、教師の注意指導や生徒の目を気にして登校しにくくなってしまいます。
そのため、親から学校に子どもの状態を詳しく伝え、理解と連携を求めることが大切になります。
例えば、子どもが起立性調節障害と診断されたこと、起立性調節障害の症状の概要、朝起きられず遅刻や欠席が多いが怠けているわけではないこと、朝のうちは登校しても集中力が低いことなどを伝えておけば、学校側も対応を検討してくれるはずです。
学校側に説明する時は、医師の診断書、起立性調節障害関連の書籍や記事を持参すると効果的です。
もしも学校側が病気を理解せず、連携も拒否するようであれば、教育委員会に連絡して対応を求めましょう。
学校側との連携としては、子どもの状態をこまめにやり取りする、子どもの体調に応じて登校時刻を調整してもらう、子どもが体調不良を訴えたらすぐ休ませる、補習を受けさせてもらうといったことが考えられます。
いずれも、親、子ども、学校で話し合って決めてください。
まとめ
親として、子どもが起きない病気(起立性調節障害)に向き合う方法について紹介しました。
いずれも基本的なことではありますが、子どもが病気になると、次々に湧いてくる心配や不安に目を奪われてなかなか実践できないことが多いものなので、意識して取り組むようにしてください。
親の関わり方だけで起立性調節障害の症状をなくすことはできませんが、子どもが抱えるストレスを減らし、症状を軽くすることはできます。
親自身が余裕をなくした時は、親族、学校、小児科、関係機関と連携しながら対応するようにしてください。
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