一昔前は、学校における子供との関わり方や学級運営は、いわゆる「教師のカン」に委ねられていました。
しかし、現代社会は、学童期の子どもの抱える問題が多様化した上に、外部から見えにくくなっており、子どもの問題に合わせた大人の支援が困難化しています。
また、いじめや不登校、自殺といった子供の問題が、社会的に認知されて高い関心を得るようになり、それらへの早期発見と早期予防の必要性が叫ばれるようになりました。
教師の資質や能力にも厳しい目が向けられるようになり、もはや「教師のカン」に委ねた教育は通用しなくなってきています。
quテストは、こうした現代社会の流れの中で、子どもと学級集団を理解し、必要な支援のための校内連携を検討して、実際に支援する体制を構築するために取り入れられた心理テストです。
教師のカンのみに頼るのはなく、テストというより客観的な情報をもとに子供への関わりや学級経営を見直そうという新しい試みの一つです。
この記事では、quテストの概要、質問内容・問題、活用方法、批判について紹介します。
quテスト(Q-Uテスト)とは
Q-Uとは、子どもが楽しい学校生活を送るためのアンケート式心理テストです。
Q-Uは、questionnaire-utilitiesの略称です。
子ども自身がアンケートに記入する、質問紙法という方式で実施します。
quテスト(Q-Uテスト)の種類
quテストには、Q-Uと、hyper-QUの2種類あります。
- Q-U:Q①学校生活意欲尺度(やる気のあるクラスをつくるためのアンケート)、②学級満足度尺度(いごこちのよいクラスにするためのアンケート)の2種類から構成されたquテスト
- hyper-QU:Q-Uの①、②のアンケートに加え、③ソーシャルスキル尺度(ふだん(日常)の行動をふり返るアンケート)が加わったquテスト
Q-Uは、①学習生活意欲と②学級満足度という2つの尺度で構成され、学級診断アセスメントとして活用できるような、学級経営に有効なデータが得られるようになっています。
なお、高校用のhyper-QUのみ、悩みに関するアンケートが加わります。
quテスト(Q-Uテスト)の対象年齢
quテストの対象年齢は、Q-U、hyper-QUのいずれも学年によって分類されています。
- 小学校1~3年用
- 小学校4~6年用
- 中学校用
- 高校用
quテストの実施時間
Q-Uもhyper-QUも、おおむね15分です。
quテスト(Q-Uテスト)の診断(分析・解釈)の方法
実施・解釈ハンドブックを見ながら分析・解釈する他、コンピューターによる診断を行うこともできます。
quテスト(Q-Uテスト)の価格
- 検査用紙+診断:各検査310円(検査用紙105円+コンピュータ診断205円)
- 実施要領:各100円(小学校、中学校、高校)
- 実施・解釈ハンドブック:各500円(小学校、中学校、高校)
なお、診断結果をCDで返却してもらう場合は、100人までが3000円、100人を超える場合は1人につき30円かかります。
quテスト(Q-Uテスト)のアンケート内容(質問内容)
quテストのアンケート内容(質問内容)は、それぞれ複数の尺度で構成されています。
学校生活意欲尺度(やる気のあるクラスをつくるためのアンケート)
- 友人との関係
- 学習意欲
- 教師との関係
- 学級との関係
- 進路に対する意識
学級満足度尺度(いごこちのよいクラスにするためのアンケート)
- 友人や教師から認められているか(承認)
- いじめや冷やかしなどを受けているか(被害者)
ソーシャルスキル尺度(ふだん(日常)の行動をふり返るアンケート)
- 対人関係における基本的なルールやマナーを守ることができているか(配慮)
- 人と関わるきっかけや関係の維持、感情交流が形成されているか(関わり)
quテスト(Q-Uテスト)の活用方法
quテストが活用されるのは、主に教育現場(学校)です。
quテスト(Q-Uテスト)で把握できること
quテストで把握できるのは、大きく分けると次の3つです。
- 子どもの学級生活の満足度と学校生活への意欲
- 学級集団の成熟度と雰囲気
- 子どもの学級生活の満足度と学校生活への意欲の相対的な位置
この3つを把握することで、子ども(不登校やいじめ被害のリスク、いじめ被害を受けている可能性、学校や学習に対する意欲など)や学級(学級の雰囲気、学級崩壊のリスクなど)に関する情報を得ることができます。
quテスト(Q-Uテスト)の実施方法
quテストは、質問紙法なので、ホームルームなどの時間を活用して学級単位で実施するのが一般的です。
quテスト(Q-Uテスト)の説明
実施する際は、学級の子どもに目的と方法をはっきりと説明し、理解を得る必要があります。
知的制約などで理解力が乏しい子どもがいる場合なども、特性に応じた方法で説明することが望ましいでしょう。
quテスト(Q-Uテスト)の実施回数
通常は、年度内に1回きりではなく、複数回実施します。
1回目を5~6月(学級における人間関係や立ち位置が固まる時期)に実施し、子ども一人ひとりや学級の状態を把握し、学級経営の方針を固め、2回目を9~10月(2学期が始まる時期)に実施して、方針の修正を行います。
3回目を実施する場合は、1年間の学級経営をふり返り、次年度へと活かすために、2~3月頃に行われるのが一般的です。
子ども同士の関係性や学級の雰囲気に違和感が出てきた場合などは、必要に応じてquテストを実施し、得られた結果を踏まえて学級経営を修正することもできます。
ただし、子ども同士やグループ同士が激しくもめた場合、新学期が始まって間もない時期、行事ごとの前後などは、子どもが浮足立っていて信頼性の高い結果が得られない可能性があるので、避けるべきだとされています。
quテスト(Q-Uテスト)実施上の留意点
- 回答結果を公表・比較しない
- 結果を子どもへの対応や学級経営に反映させる
- 結果を過信しない
通常、quテストは匿名で実施しますが、たとえ匿名でも、ある子どもの結果を他の子供の前で公表したり、比較したりするのは厳禁です。
また、quテストを実施し、実施者側が情報を得て終わりではなく、子どもにしっかりとフィードバックし、必要に応じて、子どもへの対応や学級経営に生かすことが求められています。
ただし、quテストの結果は絶対ではありません。
普段の子どもや学級の様子を踏まえ、学級担任、副担任、学年主任、教科担当、スクールカウンセラー、養護教諭など、複数人で対応を考えることが大切です。
quテスト(Q-Uテスト)に対する批判
quテストは、心理テストに分類されており、先入観で「うさんくさい」、「信用できない」と考える人はまだまだ少なくありません。
また、「質問紙法」という様式を採用しているため、子どもが①現実と理想を混同して回答する、②自分を良く見せようとする、③実施する教師への不信感や不満から正直に回答しない、④モチベーションが上がりにくいといった可能性があることも批判の対象となっています。
ただし、こうした批判も、quテストという共通のツールを使うことで教師同士が情報を共有し、互いに連携しあって子どもや学級の問題に向き合えるというメリットを否定するものではありません。
まとめ
quテストについて紹介しました。
q-uテストは、教育現場で働く人の間では浸透してきており、今後も一段と子どもへの関わり方や学級経営に役立てられていくことが予想されるテストなので、基礎的なところは押さえておくと良いでしょう。