離婚は、夫婦にとっての一大事ですが、最も衝撃を受けて深い傷を負うのは子どもです。
子どもがいる夫婦が離婚する場合にまず考えるべきなのは、子どもに与える影響と子どもの気持ちをケアする方法です。
この記事では、離婚が子どもに与える影響と、離婚後の子どもの気持ちをケアする方法について紹介します。
離婚が子どもに与える影響
離婚は、子どもに深刻な影響を与えます。
一見、離婚前と変わらず過ごしているように見えても、子どもの心は深く傷ついており、成長するにつれて離婚の影響が何らかの形で必ず現れてきます。
特に、思春期は、自傷行為、引きこもり、親への過剰な反発と家出、非行など子どもの問題が噴出する時期です。
思春期を乗り切ったとしても、大人になって結婚した後に円満な家族を作れず離婚してしまうこともあります。
親の離婚だけが原因ということはありませんが、少なからず影響しているものです。
親から見捨てられたという絶望感を抱く
親が離婚した子どもは、親の一方に引き取られることになり、もう一方の親から見捨てられたという絶望感を抱きます。
その結果、自信や積極性・主体性を失い、学業、家庭生活、対人関係など様々な影響を及ぼします。
「離婚家庭の子どもは、両親が揃った家庭の子どもに比べ、学業成績が悪くなる、社会人になった後の社会的地位が低くなる」というアメリカの心理学者による研究結果も発表されています。
もう一方の親にも見捨てられる不安を抱く
離婚により親の一方と生別した子どもは、一緒に暮らす親にもいずれ見捨てられるのではないかという不安を抱きます。
特に、一緒に暮らす親が仕事で不在がちで親子で過ごす時間が乏しい場合、子どもの不安は極めて強くなります。
板挟みの状態になる
両親から互いの悪口を聞かされたり、両親が言い争う現場を目撃したりすると、子どもは板挟みの状態に陥ります。
基本的に、子どもは、どちらの親のことも大好きで一緒にいたいと思っているため、両親が不和になると、どちらに味方すれば良いのか迷ったり、親の不和は自分のせいだと自分を責めたりすることがあります。
「家庭=安心できる場所、家族=信頼できる人」という認識が揺らぐ
通常、子どもにとって、家庭はどこよりも安心できる場所、家族は誰よりも信頼できる人です。
成長するにつれて家族より友人や恋人が大切になり、家にいるより彼らと過ごしたいと思うようになりますが、「何かあれば家庭があり、家族がいる。」という感覚は持ち続けているものです。
しかし、親が離婚して家庭が崩壊し、親の一方と生別することにより、家庭が安心できる場所ではなくなり、家族も全面的に信頼できなくなります。
家庭への安心感や家族への信頼感が揺らぐことにより、家族以外の対人関係においても他人を信頼できなくなり、大人になって家庭を持っても安心できなくなることがあります。
安心感や信頼感が揺らいでしまうことが、離婚家庭の子どもの離婚率が高い要因の一つだという指摘もあります。
精神的に混乱する
離婚する夫婦の多くは、互いに話合いを重ね、子どもの親権、離婚後の養育費、住む場所、財産分与、年金分割などを決めた上で離婚届を提出します。
「離婚すること」を自分で決断した上で離婚しているのです。
しかし、子どもは、親の決断に巻き込まれるかたちで離婚を経験します。
事前に離婚について説明されていたとしても、子ども自身には何の落ち度もないのに、突然、家庭をバラバラにされてしまうのです。
そのため、精神的に混乱し、強いストレスを感じることになります。
親の離婚から少なくとも1年程度は混乱した状態が続き、周囲の適切なサポートが得られないと、混乱が治まらないまま成長することになってしまいます。
精神疾患を抱えるリスクが高くなる
周囲の適切なサポートを得られないまま、親の離婚により混乱した状態が継続すると、うつ病や統合失調症などの精神疾患を発症するリスクが高くなります。
国や地域によって傾向に差はありますが、日本においては、「精神科受診歴のある子どものうち離婚歴のある子どもは、両親が揃った子どもの2倍近くの数であった。」という調査結果があります。
この調査結果は母数が少なく、親の離婚が子どもの精神疾患のリスクを高めると言い切ることはできませんが、可能性は示唆しています。
依存症のリスクが高くなる
親の一方に見捨てられたという絶望感を抱き、家庭が安心できる場所でなくなり、家族に全幅の信頼を寄せられなくなった子どもは、「自分は大切な存在である」という自己肯定感を持てなくなります。
その結果、アルコール(飲酒)、ドラッグ(薬物)、タバコ(喫煙)、セックスなど一時的に快感が得られる物や行為に依存するリスクが高くなります。
乳幼児には身体症状が現れる
離婚時に子どもが小さい場合でも、悪影響は及びます。
子どもは、乳児期の頃から五感が発達しており、親の言動をよく観察し、気持ちや感情なども想像以上に察知しています。
言葉を理解できない年齢だからと思い、子どもの前で夫婦ケンカを繰り返していると、子どもは混乱し、不安な気持ちを抱えきれずに様々な身体症状が現れます。
例えば、嘔吐、下痢、泣き止まなくなる、発熱の症状が現れます。
離婚後も、一方の親がいなくなったことや一緒に暮らす親が落ち込む様子を敏感に察知し、やはり身体症状として表現します。
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離婚を子供に話す時の話し方
離婚は親の都合であり、子どもには何の責任もありません。
それにも関わらず、安心できる家庭が崩壊し、一方の親と離れ離れになり、家族への信頼感も揺らぐという極めて大きいダメージを受けるのは子どもです。
せめて、離婚することを子どもにしっかり説明しておくことが、親の子どもに対する最低限の責任です。
離婚を子どもに話す時のポイントについて見ていきましょう。
子どもの年齢
一般的に、子どもに離婚の話をするのは、離婚時の子どもの年齢が3歳以上です。
乳児期の赤ちゃんや生後2歳頃までの子どもは、親の話の内容を理解できないからです。
生後3歳以上でも、就学前の子どもが離婚について正しく理解することは難しいですが、親が真剣に話していることや、ぼんやりとした内容くらいは理解できるので、しっかり子どもと向き合い、子どもが理解しやすい言葉で話してあげましょう。
子どもが落ち着いて話を聞くことができるタイミングを見計らう
子どもは、年齢が上がるにつれて、対人関係、学業、部活など様々な悩みを抱えるようになります。
他に大きな問題を抱えて悩んでいる時期に離婚の話をすると、より一層混乱してしまうため、子どもが落ち着いて離婚の話を聞くことができるタイミングを見計らいましょう。
離婚は親の都合であることをはっきり伝える
子どもは、親の離婚の原因を自分に求めがちです。
また、親の中には「子どものために離婚する」と子どもに伝えてしまう人がいます。
しかし、離婚は親の都合であり、子どもには何の責任もありません。
「子どものために離婚する」はただの言い訳で、親が離婚の責任を子どもに転嫁しているだけです。
離婚の話をする時は、「親の都合で離婚するのであって、子どものせいではないこと」をはっきり伝えてあげましょう。
離婚する相手の悪口を言わない
子どもにとっては、パパもママも世界に2人しかいない大切な親です。
親がもう一方の親の悪口を言うということは、子どもの大切な親を否定することであり、ひいては子ども自身を否定することです。
たとえ離婚する相手に対する怒りや不満が蓄積していたとしても、子どもの前では出さないようにしてください。
嘘はつかない
「パパが浮気した。」、「ママが借金をしていた。」などと嘘をつき、子どもに離婚を納得させ、自分を正当化しようとする親がいます。
しかし、多くの嘘はいずれ発覚しますし、子どもが親のことを信用できなくなってしまうので、控えてください。
子どもを大切に思っていることを伝える
親が離婚した子どもは、親の一方に見捨てられたという絶望感を抱いてしまいます。
そのため、子どもと離れて暮らす親は、「親同士は離婚しても、子どものことを大切に思っている。」と子どもに伝え、子どもの気持ちを落ち着かせてあげることが大切です。
一緒に暮らす親が、離れて暮らす親が子どものことを大切に思っていることを子どもに伝えてあげることも重要です。
離婚家庭の子どもの気持ちをケアする方法
離婚家庭の子どもが、親の離婚の影響から立ち直るには、親の関わり方が重要です。
子どもを大切に思っていることを伝える
離婚時にも伝えることですが、離婚後も、両方の親が子どもを大切に思っていることを伝えてあげましょう。
離婚時と異なるのは、折を見て、繰り返し伝えることです。
また、言葉だけでなく、忙しい中でも子どもとの時間を作る、子どもの話に耳を傾ける、一緒に外出するなど態度で示すことも重要です。
面会交流を継続する
子どもは、両方の親から愛情を受けることで、健全に成長することができるものです。
そのため、一緒に暮らす親の関わりに加え、離れて暮らす親が子どもとの面会交流を継続的に行うことも大切です。
面会交流を続けるには、両親が「離婚しても子どものことでは協力する。」という意識を持っていることが重要です。
転居・転校、再婚などは子供の意見をしっかり聞く
離婚に伴って転居・転校が必要になる家庭も多いですが、子どもにとっては、家庭の崩壊に加えて生活環境まで激変すると、より一層辛い思いをすることになります。
そのため、事前に転居や転校について子どもに相談し、子供の意見を聞いてできる限り尊重してあげましょう。
離婚後の再婚についても同じです。
親としては新しい生活に期待が膨らんでいるかもしれませんが、まずは子どもの意見を聞き、それを尊重してあげることが大切です。
まとめ
離婚が子どもに与える影響は、親が想像している以上に大きいものです。
離婚することはやむを得ないことですが、子どもに与える影響を理解し、子どもの心のケアに努めてあげましょう。