これまで、日本では「赤ちゃん言葉で話しかけてはダメ」、「赤ちゃん言葉は言葉の発達を遅らせるから使わない方が良い。」という考え方が一般的でした。
また、赤ちゃん言葉に否定的な見解を示す教育の専門家の発言や著書が社会に広まったことで、より一層、「赤ちゃん言葉」が使われなくなりました。
知育の研究においても、「赤ちゃんの頃から正しい日本語を教えることが、言葉の発達を促す。」と言われており、赤ちゃん言葉はNGとされてきました。
しかし、2014年、「パパママから赤ちゃん言葉で話しかけられた方が、大人の言葉で話しかけられるよりも語彙数が多くなる。」という研究結果が、アメリカの大学から発表されたことで、赤ちゃん言葉に対する考え方は変化し始めました。
この記事では、赤ちゃん言葉はダメなのかどうか、赤ちゃんに話しかける時のポイント(赤ちゃん言葉の教え方)、よく使う赤ちゃん言葉一覧について紹介します。
赤ちゃん言葉がダメ(使わない)なの?良いの?
赤ちゃん言葉がダメ(使わない)という考え方が主流でしたが、赤ちゃん言葉が語彙数を伸ばすという研究結果が登場し、赤ちゃん言葉への見方が変化しつつあります。
赤ちゃん言葉はダメ(使わない)という考え方
赤ちゃんは、まだ言葉を話せないうちから、パパママや周囲の人が話す言葉を無意識のうちに聞いて覚える力を持っています。
そのため、赤ちゃん言葉で話しかけていると、赤ちゃんは赤ちゃん言葉を覚え、言葉として話すようになった後、もう一度大人の言葉を覚え直すことになります。
例えば、犬を「ワンワン」と覚えさせた場合、赤ちゃんは「犬=ワンワン」と覚え、犬を見るとワンワンと呼ぶようになりますが、いずれかの段階で「ワンワン」から「犬」に覚え直させる必要が生じてきます。
一方で、最初から大人の言葉だけを教えていれば、赤ちゃんは大人の言葉を覚えて話すようになるので、「赤ちゃん言葉→大人の言葉」という覚え直しが必要ありません。
こうしたことから、「赤ちゃん言葉は言葉の発達を遅らせる。」と考えられていたのです。
赤ちゃん言葉で話しかける方が語彙数が増えるという研究結果
ところが、2014年、アメリカのワシントン大学とコネチカット大学の共同研究チームが、赤ちゃん言葉で話しかけた方が語彙数が多くなるという研究結果が発表しました。
研究方法は、次のとおりです。
- 対象:はっきりと言葉を話さない26人の1歳児
- 方法:対象の赤ちゃんの言語環境(赤ちゃん言葉による話しかけの有無や頻度、対面の話しかけ濃霧や頻度、周囲に人がいるかどうかなど)を4日間記録
- 追跡調査:対象の赤ちゃんが2歳になった時点での語彙数を調査
研究結果は、次のとおりです。
- パパママが赤ちゃん言葉を使い、たくさん話しかけている家庭では、赤ちゃんが喃語を話す回数が多くなる
- パパママが赤ちゃん言葉を使って対面で話しかけていた家庭の赤ちゃんが、もっともたくさんの言葉を覚えていた(平均433語)
- パパママが赤ちゃん言葉を使って話しかける頻度が少なかった家庭の赤ちゃんは、覚えている言葉が少なかった(平均169語)
言語環境を記録した期間が4日間と短く、話しかけ方や周囲の環境といった変数も多いため、「赤ちゃん言葉だけで語彙数が伸びる」とは言い切れません。
しかし、「赤ちゃん言葉はダメ(使わない)」というこれまでの考え方を大きく揺らがせる研究結果であることは確かです。
実際に、研究結果が発表された後も、「赤ちゃん言葉はダメ(使わない)」を勧める教育関係者は少なくありませんが、「赤ちゃん言葉を使おう」という意見が少しずつ増えてきています。
結局のところ、赤ちゃん言葉で話しかけるのは良いの?悪いの?
赤ちゃん言葉による話しかけの良し悪しについては、現時点で判断することは難しいものです。
しかし少なくとも、赤ちゃん言葉が言葉の発達を遅らせるリスクはほぼなく、活用が否定されるものでないことは分かってきたと言えるでしょう。
赤ちゃんの頃は、自発的に言葉を発し、コミュニケーションを楽しめることが一番なので、赤ちゃん言葉でも大人言葉でも気にせず、たくさん話しかけてみてはどうでしょうか。
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赤ちゃんへの教え方(話しかけ方)のポイント
赤ちゃんは、楽しいことはグングン吸収しますが、つまらないことや嫌なことはなかなか身についていかないものです。
そのため、言葉の発達を促す場合は、使う言葉だけでなく、話しかけ方も大切です。
赤ちゃんの方を向いて話す
顔と身体を赤ちゃんの方に向けて、赤ちゃんの目を見て話すことで、赤ちゃんは「僕(私)に話しかけているんだな。」と理解できます。
また、「相手の方を向いて話す」という、会話の基本的な姿勢を自然と身につけることができます。
笑顔で積極的に話しかける
赤ちゃんは、思っている以上にパパママの表情をよく観察しており、パパママが笑顔ならうれしくなり、不機嫌そうなら不安になるものです。
また、パパママから話しかけられると、飛び跳ねるくらいうれしい気分になり、一方で、黙って何も言ってもらえないと、寂しくてたまらなくなります。
そのため、意識して積極的に赤ちゃんに話しかけ、笑顔や明るい表情で安心させてあげましょう。
高めの声色を意識する
赤ちゃんは、高めの声色に良く反応することが分かっています。
特にパパは、いつもより高めの声で話しかけた方が、赤ちゃんに関心を持ってもらいやすいでしょう。
ちょっとした発声でも反応する
「あっあ」、「あ~」、「う~」といった言葉にならない声でも、赤ちゃんとしては、パパママとコミュニケーションを取ろうと精一杯頑張っています。
赤ちゃんの発声に気づいたら、「どうしたの~」、「ご機嫌だね~」と笑顔で声をかけてあげましょう。
そうすることで、赤ちゃんは、「僕(私)に関心を持ってくれている。」と感じて嬉しくなり、もっとたくさん声を出そうという気持ちになります。
ゆっくり、はっきり、短く話す
赤ちゃんは、早口だと聞き取れませんし、長い文章も理解できません。
「おいしいね~」、「電車だね~」といった単語で、ゆっくり、はっきりと話しかけましょう。
ただし、ゆっくり過ぎるとかえって聞き取りにくいこともあるので、繰り返し話しかける中で、赤ちゃんにちょうど良いポイントを見つけることが大切です。
気持ちを代弁する
赤ちゃんは、周囲の刺激に対して色々なことを感じますが、それを言葉で表現できません。
赤ちゃんの感じているであろう気持ちを代弁してあげることで、赤ちゃんは、自分の感じた感覚と言葉を関連付けられるようになっていきます。
相槌を打つ
「そうだね~」、「うん、うん」と相槌を打ち、うなづきながら聞いてあげることで、赤ちゃんは、「聞いてもらっている。」、「受け入れられている。」と感じることができ、もっとたくさん話そうという意欲を持てるようになります。
よく聞く、よく使う赤ちゃん言葉一覧
赤ちゃんは、パパママが自分と同じ赤ちゃん言葉(喃語や単語)を話すのを聞くと、「あ、僕(私)の話したことを分かってくれている。」とうれしくなり、たくさん話してくれるようになるものです。
パパママとしても、赤ちゃんがよく使う赤ちゃん言葉を把握しておくと、赤ちゃんとのコミュニケーションがスムースに楽しめます。
そこで、日常生活の中でよく使う赤ちゃん言葉を列挙しました。
中には、複数の赤ちゃん言葉がある単語もありますが、赤ちゃんが発した言葉を使うことがポイントです。
赤ちゃん言葉一覧(家族)
- パパ:パー、パパパ、パパ
- ママ:マー、マンマ、マンマン、ママ
- お兄ちゃん:ニン、ニイニ、ニ~
- お姉ちゃん:ネネ、ネンネ、ネ~
- おじいちゃん:ジィ、ジィジ
- おばあちゃん:バァ、バァバ
赤ちゃん言葉一覧(あいさつなど)
- おはよう:アーヨー
- こんにちは:コンニチャ
- こんばんは:コンバ
- ありがとう:アートー、アント
- ごめんなさい:メンネ、メンチャイ
- バイバイ:バイバイ
- ちょうだい:タイタイ、タイ!
赤ちゃん言葉一覧(しぐさ、動き)
- 歩く:アンヨ
- 立つ:タッチ
- 座る:オッチン
- 寝る:ネンネ
- 抱っこ:アー、アッコ
- 食べる:モグモグ、アムアム
- 飲む:ゴックン、ングン
- 噛む:カミカミ、アミアミ
- 吐く:ゲ~、べー
- 片づける:ナイナイ
- おしっこする:シーシー、チー
- うんちする:ウンウン、ウ~
赤ちゃん言葉一覧(物、乗り物、動物など)
- ごはん、お菓子:マンマ、マンマン
- 水:ミジュ
- ジュース:ジーシュ
- 車、バス:ブーブー、ブー、ブンブン
- 電車:ガタンゴトン
- 新幹線:シンアセ、ビュー
- ネコ:ナンナン、ニャンニャン、ニャ~
- イヌ:ワンワン
- カラス:カー、カーカー
- ライオン:ガオー
- ヒツジ:メ~
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まとめ
赤ちゃん言葉の善し悪し、赤ちゃん言葉の教え方、よく使う赤ちゃん言葉一覧について紹介しました。
赤ちゃん言葉一覧の中に、お子さんに教えた、お子さんが話しているといった赤ちゃん言葉はありましたか?
赤ちゃんが、喃語を卒業して赤ちゃん言葉を話し始めたら、言葉を介した親子のコミュニケーションの幅が一気に広がります。
最初は、マンマとママ、パパとバァバ、アーとアーンなど聞き取りにくいこともありますが、すぐに慣れていきます。
中には、方言をさらになまらせたような赤ちゃん言葉や、日本語以外に聞こえる赤ちゃん言葉を話す赤ちゃんもいます。
赤ちゃん言葉一覧で示したのは、あくまで一般的な言葉なので、地域性やパパママの関わり方、赤ちゃんを取り巻く環境などによって、赤ちゃんが発する言葉はさまざまです。
いちいち修正したり叱ったりするのではなく、赤ちゃんの話す言葉の真似をして、言葉を使ったコミュニケーションの楽しさや便利さを体感させてあげることが大切です。
なお、赤ちゃん言葉を使うことの是非については、将来的に現在とは異なる研究結果が示される可能性はあります。
しかし、赤ちゃん言葉であれ、普通の言葉であれ、会話をたくさんすること自体が赤ちゃんに悪影響を与えることはないので、その点は心配いらないでしょう。