赤ちゃんの肌には、個人差はありますが、生まれつき様々な色の「あざ」があります。
赤ちゃんのあざの代表的なものが、蒙古斑、ウンナ母斑、サーモンパッチ、太田母斑の4つです。
この記事では、赤ちゃんの肌にある主な「あざ」4つについて紹介します。
蒙古斑とは
蒙古斑は、赤ちゃんのおしり(臀部)から腰や背中に生まれたときからあるアザのことです。
蒙古斑の有無は人種によってかなり差があり、黄色人種の赤ちゃんのほぼ90%、黒人の赤ちゃんの約80%、白人の赤ちゃんの約10%にみられます。
一方で、男女差は認められません。
蒙古斑の原因
蒙古斑は、胎児の頃に、メラノサイトというメラニンを生成する色素細胞が真皮の中に消えずに残ったものです。
身体に害はありません。
異所性蒙古斑(おしり以外の蒙古斑)
蒙古斑は、おしりだけではなくて、腰や背中、太もも、手足にもみられることがあり、おしり以外にみられる蒙古斑を異所性蒙古斑といいます。
異所性の蒙古斑は、色の濃いもの薄いものや、広い範囲にできるものなど、個人差が大きいものです。
また、大人になるまで残る異所性蒙古斑(持続性蒙古斑)もあります。
蒙古斑はいつから、いつまで(消失時期)
蒙古斑の出現時期と消失時期を確認しておきましょう。
いつから
蒙古斑は、胎児の頃にできており、生まれた時点でみられます。
いつまで(消失時期)
通常の蒙古斑は、生まれてから青色が強く出ますが、時間が経つにつれて色が薄くなっていき、小学校に入学する前後、遅くとも10歳頃までに消えていきます。
異所性蒙古斑、特に、持続性蒙古斑の場合は、大人になっても残ることがありますが、たいていは時間がかかるもののいずれ消えてなくなります。
蒙古斑の治療
蒙古斑は、自然に消えていくものなので治療は必要ありません。
しかし、手足などの蒙古斑は人目につくため、特に女性は気になってしまうものです。
そのため、自然に消えるのを待たずに、レーザー治療で消してしまう人も少なくありません。
蒙古斑のレーザー治療
レーザー治療は、6ヶ月から1年ほどの間に数回レーザー照射(Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー)を行います。
費用は治療を受ける病院等や、蒙古斑の範囲(面積)によってバラつきがありますが、10万円前後から数十万円(保険適応を受けると3割負担)になります。
蒙古斑との見間違えに注意
蒙古斑は、他のあざや出血などと見間違えることがあります。
皮下出血
皮下出血は、濃い蒙古斑と見間違えることがあります。
皮下出血は、紫色で、短い期間で色が変化するのに対し、蒙古斑は短期間で色調が変化しないという違いがあります。
青色母斑、太田母斑(早発型)
青色母斑や太田母斑(早発型)も蒙古斑と見間違えやすいものです。
青色母斑は、隆起しているかどうか(蒙古斑は隆起していない)、太田母斑は、眼球に症状が見られるかどうか(蒙古斑はみられない)、褐色を帯びているかどうか(蒙古斑は褐色は帯びない)で区別します。
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ウンナ母斑とは
ウンナ母斑とは、赤ちゃんが生まれたときから、後頭部からうなじにかけてみられる赤いアザのことで、新生児中心性紅斑の一種です。
コウノトリが赤ちゃんを加えて運んできたときにできたマークだと考えられており、ストークマークとも呼ばれます。
濃淡のムラや凹凸がなく、境界がはっきりしているのが特徴です。
発症率は1割前後です。
新生児中心性紅斑
血管の拡張によって生じる紅斑で、赤ちゃんの身体の中心部によくできます。
後頭部からうなじにかけてみられるウンナ母斑、まぶた、鼻の下~上唇にみられるサーモンパッチ、額にみられる火炎母斑などが代表的です。
頭部や背中に紅斑ができることもあります。
新生児期の赤ちゃんの多くに何らかの紅斑がみられますが、たいていは1~2年で自然になくなっていきます。
ウンナ母斑の症状
後頭部からうなじにかけて赤いアザができます。
放置しても身体に害はありませんが、うなじなど目立つ場所にできることがあるので、気にする人は少なくありません。
サーモンパッチと比べると、ウンナ母斑の方が赤みが強く、消えてなくなるのがゆっくりです。
ウンナ母斑の原因
胎児期に細胞が突然変異し、皮膚の真皮表層の毛細血管が拡張、膨張することにより、ウンナ母斑ができます。
ウンナ母斑はいつから、いつまで
ウンナ母斑の出現時期と消失時期について確認しておきます。
いつから
生まれたときからみられます。
いつまで
たいていは、3歳ころまでに消えてなくなります。
3歳を過ぎてウンナ母斑が残っている場合、大人になってもウンナ母斑が消えずに残る傾向があります。
ウンナ母斑の治療
放置しても身体に悪影響はありませんが、目立つ位置にできると人の目を引いてしまうので、治療する人は少なくありません。
治療は、レーザー治療が中心です。
レーザー治療は、年齢が若いほど効果が高くいので、治療を受ける場合は乳児期に済ませておくのがおすすめです。
ただし、範囲が狭ければ局所麻酔で済みますが、範囲が広いと麻酔が必要になるので、生後3ヶ月以降でないと治療を受けることはできません。
また、毛根を焼くことになるので、髪の毛が薄くなる可能性もあります。
3歳を過ぎて紅斑が残る場合は、皮膚科受診を検討する
ウンナ母斑は身体に無害ですが、同じ紅斑でも、スタージ・ウェーバー症候群(顔の片側もしくは両側、目の周りに紅斑ができる)や、クリッペル・ウェーバー症候群(片腕や足に紅斑ができる)といった病気の場合もあります。
これらの病気は、発達や神経に悪影響を及ぼすので、3歳を過ぎても紅斑が残る場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
サーモンパッチとは
サーモンパッチとは、毛細血管の拡張により、赤ちゃんの額(ひたい)、眉間(みけん)、鼻など顔の中央部分にできる、シミのような赤いあざのことです。
産卵期のサケに見られる赤い模様に似ているため、サーモン(サケ)パッチという名前が付いています。
正中部母斑とも言われます。
生まれてきた赤ちゃんの顔にサーモンパッチがあったら、お父さんお母さんもびっくりしますし、「このまま消えなかったらどうしよう」と不安にもなるでしょう。
しかし、サーモンパッチの症状は、年齢の経過とともにその多くが消えていくものなので、過度な心配をする必要はありません。
サーモンパッチの症状
サーモンパッチは、新生児の約30%に見られる症状です。
生まれたときからサーモンパッチがあることが多いものですが、生まれて少ししてからあざが出てくる赤ちゃんもいます。
赤ちゃんの額の中央、眉間、鼻と上唇の間など、顔の中央部分に赤いあざができます。
赤いあざは境界があいまいで、症状の出ている部分に腫れやくぼみはなく平らです。
あざの濃さや範囲は個人差が大きく、まぶたなど顔の中心部分以外にあざができることもあります。
赤ちゃんがいきんだり泣いたりしたときや、気温が低い場所にいるときは、あざの赤みが増したように見えることがあります。
一方で、症状が出ているところを圧迫すると、一時的に赤みが消失します。
サーモンパッチに痛みやかゆみの症状はないので、あせもやアトピーのように、赤ちゃんが不機嫌になったりかきむしったりすることはありません。
サーモンパッチの原因
サーモンパッチの原因は、皮膚(真皮表層)の毛細血管の機能的拡張です。
皮膚の毛細血管が拡張することにより、赤い色が浮き出してきます。
打撲や圧迫など外的な要因によるものではありません。
遺伝や神経機能の未発達による可能性も指摘されています。
サーモンパッチの治療
サーモンパッチの消失時期と治療法について確認しておきます。
いつ消える
サーモンパッチの症状は、年齢の経過とともに自然に消えていくことが多いものです。
まぶたであれば1歳前後、額、眉間、鼻の下は1歳半ころには消えてなくなります。
統計上は、1歳半までで約80%、3歳で約90%が自然消失します。
消えないときの治療
しかし、大人になってもまったく消えなかったり、薄い赤みが残ったりすることもあります。
2歳になってもサーモンパッチが消えないときは、皮膚科の受診を検討してください。
皮膚科では、レーザー治療で赤みを消します。
完全に消えないことや、レーザーが目に入るといった危険性もあるので、事前に治療のリスクをよく確認しておくことが大切です。
太田母斑とは
太田母斑とは、ほっぺたや目の周囲にかけてできる青色や赤褐色のあざのことです。
思春期の女性、特に東洋人の女性によく見られるものですが、新生児期や乳児期の赤ちゃんの頃からあざができることもあります。
なお、肩から上腕部にかけての青色のあざは、伊東母斑と呼ばれています。
太田母斑の症状
ほっぺたや目の周囲にかけて青色や赤褐色のあざができます。
顔の片側だけにあざができやすいことと、境界線が曖昧なことが特徴です。
かゆみや痛みはないので、赤ちゃん本人が気にすることはありません。
また、新生児期から乳児期にできた太田母斑の色は、ごくごく薄くて目立たないため、お父さんお母さんも気づかないことがありますが、年齢を重ねるにつれて濃くなっていきます。
あざの大きさや形は個人差が大きく、ほっぺたの一部だけにできることもあれば、顔全体に広がることもあります。
ぶつけてできたあざに見えることもありますし、サーモンパッチやウンナ母斑などと間違えることもあります。
なお、眼球に青色の色素沈着が見られることもあります。
太田母斑の原因
遺伝の可能性は否定されていますが、はっきりした原因は見つかっていません。顔にあざができるのは、皮下組織でメラニン色素が増えるためです。
太田母斑はいつから、いつまで
太田母斑の出現時期から消失時期について確認しておきます。
いつから
思春期からできることが多いのですが、生まれたときから見られることもあります。
いつまで
自然と消えてなくなることはほとんどなく、治療しない限りあざは残ります。
太田母斑の治療
放っておいても身体に悪影響はありませんが、目の周りやほっぺたなど目立つところにできやすいため、小さいうちに治療しておいてあげたいと思うパパママは多いでしょう。
太田母斑には、肌のあざができている部分にレーザーを照射し、色素細胞を壊す治療が行われます。
適切な波長のレーザーを照射することにより、特徴的な青色や赤褐色が薄くなります。
赤ちゃんの肌は薄いので、完全に色を消してしまえることも少なくありません。
ただし、治療にはレーザー照射の痛みが伴います。
まとめ
蒙古斑、ウンナ母斑、サーモンパッチ、太田母斑はそれぞれ異なる原因でできるあざですが、いずれにしても赤ちゃんの肌にあると、パパママとしては心配になってしまうでしょう。
体には害がないので、基本的にはそのままにしておきますが、目立つ場所にある場合には治療を検討することになります。