早期教育を知っていますか?
早期教育は、乳幼児期の頃から子供に文字や数、音楽などを教えるもので、知育とも直結しています。
日本では、「何とか教育」、「何とかメソッド」、「何とか式」といった名前でいくつもの早期教育が実践されており、子どもに受けさせているパパママも多いのではないでしょうか?
以前は、早期教育が無批判に推奨されることもありましたが、早期教育が社会に浸透するにつれ、デメリットも指摘されるようになっています。
この記事では、早期教育の概要、早期教育のメリットとデメリット、早期教育を実践するためのポイントについて紹介します。
早期教育とは
早期教育とは、一般的な教育開始時期よりも早くから、子どもに対して文字、言葉、スポーツ、算数、音楽などの教育を受けさせることです。
通常は、パパママが、将来の選択肢を増やしてやりたい、社会で活躍できる大人になってほしい、自己肯定感や自尊心を高めてやりたいと考えて、子どもに早期教育を受けさせます。
早期教育は、脳が柔軟で吸収力や順応力が高いうちに教育を受けることで、脳の発達が促され、子どもの知的好奇心や考える力が向上するという考え方に基づいています。
早期教育の考え方は、脳科学や心理学(特に発達心理学や児童心理学)の研究結果の影響が強く、研究の進歩とともに新しい実践方法が開発されています。
以前は、学力面を重視した早期教育が中心でしたが、現在は、コミュニケーション能力(社会性)、ユニークさ(独創性や発想力)、協調性や共感性を育むことを目指すものも増えてきました。
なお、早期教育と混同されやすいものにエリート教育(英才教育)があります。
エリート教育は、特定の目標を達成するために、幼少時から特定分野について集中して教育を受けるものです。
特定の目標とは、例えば、有名大学に進学させたい、プロのスポーツ選手や音楽家にならせたいなどです。
早期教育と似たところもありますが、より目標達成に重点を置いた教育と言えます。
早期教育のメリット
早期教育のメリットは、脳の発達が促進され、子どもの能力が維持・向上するところにあります。
子どもの脳の発達が促される
人の脳は、3歳までの乳幼児期の頃が柔軟性、吸収力、容量ともに人生で一番優れており、この時期に脳に良質な刺激を与えることで、子どもが持っている能力を最大限に引き出せると考えられています。
また、低月齢であるほど脳の能力は高く、幼児期よりも胎児や新生児・乳児の頃に知的刺激をたくさん与える方が良いと言われています。
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右脳の発達が促される
人の脳には右脳と左脳があり、次のとおり、役割が異なります。
- 右脳:たくさんの情報を無意識に記憶して処理するのが得意
- 左脳:論理的な思考や計算が得意
新生児期・乳児期から3歳の幼児期までは右脳の方が優位に働き、3歳を過ぎると左脳の方が優位に働くことが、脳科学の研究結果から明らかにされています。
そのため、右脳の発達には、3歳までの乳幼児期に刺激を与えることが大切と考えられています。
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子どもが本来持っている能力を維持できる
例えば、赤ちゃんは、英語のLとRを聞き分ける能力や、人とそれ以外の物や表情を見分ける能力を生まれながらに持っています。
しかし、活用する機会がない環境に置かれていると、能力は気づかないうちに消失してしまいます。
早期教育により、子どもが常に知的刺激に触れられる環境に置くことで、生まれながらに持っている能力を維持・向上させることができます。
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社会性が発達する
早期教育には、リトミックをはじめ、他の乳幼児やパパママと一緒に集団で行うものが少なくありません。
家族以外の人と触れ合う機会が多いことで、子どもの社会性が育まれていきますし、触れ合うこと自体が脳に良い刺激を与え、脳の発達にもつながります。
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早期教育のデメリット
メリットが強調されがちな早期教育ですが、デメリットも指摘されるようになっています。
子どもにストレスを与える
早期教育は、エリート教育ほどではないにしても、親の希望や意向で子どもに教育を受けさせるという性格の強いものです。
そのため、早期教育の内容や環境が子どもの能力や特性に合っていない場合、子どもがストレスを感じるリスクがあります。
しかし、子どもは親の期待に応えようとするものですし、ストレスをうまく解消したり、言葉で伝えたりする力も未熟なので、ストレスを抱え込んでしまいがちです。
そして、ストレスをため込んだ結果、精神的に不安定になる、キレやすくなる、自傷他害に及ぶ、食欲がなくなる、学力が低下するといった問題が生じてしまいます。
脳が要領不足になる
人の脳の許容量は有限で、情報を詰め込みすぎると、パソコンと同じで容量不足を引き起こしてしまいます。
しかも、パソコンのように、USBメモリーや外付けハードディスクを使って容量不足を補うこともできません。
そのため、早期教育により情報を脳に詰め込みすぎると、その後の成長発達過程で経験・学習したことをインプットする領域まで食いつぶしてしまうという指摘がなされています。
社会性が育まれない
家庭でプリント類をひたすらこなしていく早期教育の場合、課題をこなすことで知識量は増えますが、その分、家族と触れ合ったり遊んだりする時間が減ってしまいます。
その結果、頭でっかちで社会性のない子どもになり、早期教育で得た豊富な知識も活用されないままになるリスクがあります。
なお、早期教育でも「遊び」の要素を取り入れた教材がたくさん開発されています。
しかし、遊びの本質は、子どもが自由な発想力や想像力を駆使して自発的に行動することであり、大人が準備した早期教育の遊びとは性質が異なりますし、得られるものもまるで違います。
競争に勝つことや他人の評価を偏重するようになる
早期教育は、子どもの能力を引き出すためのものですが、行きつくところは競争社会で他人に勝ち、良い評価を得ることです。
そのため、早期教育を受けていない子どもに比べ、競争や評価に敏感になります。
幼いころから競争や評価にさらされることで、競争に勝つことや他人の評価ばかり気にするようになり、思いやりや絆といった人として大切なものが十分に育まれないリスクがあります。
指示待ち人間になる
早期教育は、大人が考えた課題を与え、子どもがそれをこなすという構造のものが多いものです。
そのため、本来、子どもが持っている「自ら世界に関心を持ち、働きかけていく力」が伸びず、受け身の姿勢を身につけるリスクがあります。
結果、大人になっても「指示待ち人間」になる可能性が指摘されています。
知識を活用する力は身につかない
早期教育を続けることで脳の発達が促され、知識量は増えていきます。
しかし、例えば、日常生活において何らかの問題場面に出くわした際に、蓄えた知識を活用して解決する力が身につくかどうかは、明らかにされていません。
また、早期教育によって、いわゆる「考える力」が向上するかどうかについても、意見が分かれています。
早期教育を実践するためのポイント
早期教育のメリットとデメリットを踏まえた、子どもに早期教育を受けさせる時のポイントは、次のとおりです。
- やりすぎない
- 子どもの自発性を尊重する
- 子供の成長発達や特性を見極める
- 親子で取り組む
- 競争させない
早期教育は、子供の成長発達をサポートする手段の一つにすぎません。
「早期教育さえやっておけば将来が開ける」、「子どものためには早期教育が必須」と思い詰めず、他の習い事や遊びと同じレベルでとらえて、親子で気楽に取り組むことが大切です。
子どもは、「自発的に楽しんで取り組んだこと」はすぐ吸収し、身につけていくものなので、押し付けはなるべく控え、子どもが自発的に取り組むよう工夫しましょう。
また、子どもは一人ひとり能力も性格も違うので、自分の子どもに合った教育を受けさせることも大切です。
親の希望や理想で子供に合わない教育を受けさせると、子どもも親も辛い思いをすることになります。
子どもに合った早期教育を見つけることで、子どものやる気を引き出し、無理なく持続させることができます。
早期教育の性質上、多少の競争に巻き込まれることはやむを得ないところですが、親同士の競争に巻き込まず、随時、周りの子どもと協力することの大切さも教えてあげましょう。
まとめ
早期教育は、今ではどこでも気軽に受けられるようになってきましたが、その分、受けられる早期教育の内容や質も様々です。
また、早期教育はビジネスの一種なので、メリットばかりが強調されがちですが、紹介してきたようにデメリットも少なくありません。
メリットとデメリットの両方を把握した上で、早期教育を受けさせるかどうか、受けさせるとすればどのようなものにするか、家族で慎重に話し合うことが大切です。