赤ちゃんは、手足も自由に動かせない状態で生まれてきますが、日に日に身体が発達してできることが増えていきます。
生後3~4ヶ月頃には首すわりが完成し、生後5~6ヶ月頃には寝返りや寝返り返りを覚えて室内をゴロゴロ移動するようになります。
そして、お座りが上手になるのと同じ頃に、四つん這いで移動する方法「ハイハイ」を覚えます。
赤ちゃんがハイハイを始めると、行動範囲が一気に広がってケガや事故のリスクが高まるため、親としては部屋の安全対策を見直さなくてはなりません。
また、赤ちゃんがハイハイしない場合の練習についても知っておきたいものです。
この記事では、赤ちゃんのハイハイの概要(種類、ズリバイとの違い)、ハイハイを始める時期、練習方法、部屋の安全対策、ハイハイしない場合について紹介します。
赤ちゃんのハイハイとは
ハイハイとは、赤ちゃんが手の平と膝を床について身体を持ち上げ、四つん這いの状態で両手両足を交互に動かして移動することです。
通常、赤ちゃんは、首すわりが完成し、寝返りや寝返り返りを覚えた後、お座り、ズリバイ、ハイハイへのチャレンジを始めます。
ハイハイでの移動に慣れると、今度はより高いところに興味を持つようになってつかまり立ちを始め、伝い歩きや一人歩きを覚えていきます。
つまり、ハイハイは、赤ちゃんが寝返りや寝返り返りで移動することを覚えてから、一人で立って歩くようになるまでの中間地点なのです。
赤ちゃんのハイハイのメリット
赤ちゃんのハイハイは、赤ちゃんにとっては部屋の中を自由自在に動くための手段です。
寝返りや寝返り返りよりも行動範囲が広がってスムースに移動できる上、視界がひらけて興味関心を持つ対象の範囲も広くなります。
床に置かれたおもちゃだけでなく、ソファの上に置かれたクッションや本棚にある本など、より高い場所にあるおもちゃ以外の物にも興味を持ち、近づいて触ろうとします。
成長発達の観点から見ると、ハイハイで動き回ることで全身の筋肉がバランス良く鍛えられ、二本の足で立って歩くための足腰の力がつきます。
また、十分な期間ハイハイを続けた赤ちゃんは、バランス感覚が養われるとともに、体勢を崩した時に手を床に突き出して頭を守ることも覚えます。
ハイハイは全身運動でたくさんエネルギーを使うので、赤ちゃんが離乳食をたくさん食べたり、寝つきが良くなったりするようになり、食生活や生活リズムが整うという効果もあります。
ハイハイとズリバイの違い、ハイハイの種類
ハイハイと似た動きにズリバイがあります。
ズリバイは、ハイハイを始める前段階の移動方法というのが一般的ですが、ハイハイの種類の一つとされることがあります。
また、ハイハイは、手足や身体の使い方によって一般的なハイハイ、肘ばい、高這いに分類されることがあります。
ハイハイとずりばいの違い
ズリバイとは、うつ伏せでお腹を床につけた状態で、腕や足の裏で床を押したり蹴ったりして前や後ろに這って移動することです。
いわゆる「匍匐前進(ほふくぜんしん)」で、ハイハイとほぼ同じ時期(生後7ヶ月~8ヶ月頃)に始まります。
ハイハイは、ズリバイの状態から両手両足で身体を支えて持ち上げる必要があるため、①ズリバイ、②ハイハイの順番で覚えることが多いものです。
しかし、赤ちゃんの成長発達は個人差が大きく、いきなりハイハイを覚える赤ちゃんもいれば、ハイハイを覚えてからズリバイを始める赤ちゃんもいます。
なお、ズリバイを始める前に、ズリバイの姿勢で後ろ向きにズリズリ下がる「後ばい」を始めることがあります。
腕と足をうまく連動させることができず、足で床を蹴る一方で腕を突っ張ってしまい、身体が後ろに下がってしまうのです。
一般的なハイハイ
四つん這いの状態で両手両足を交互に動かすハイハイです。
赤ちゃんの多くは一般的なハイハイを覚えますが、肘ばいや高這いだけを覚えたり、ズリバイ、肘ばい、ハイハイ、高這いの順番で覚えたりする赤ちゃんもいます。
いずれも赤ちゃんの個人差によるものであり、発達上の問題はありません。
肘ばい
肘ばいとは、肘を立てて上半身を起こした状態で、左右の肘を交互に床につけて前や後ろに移動することです。
ズリバイとハイハイの中間の姿勢で移動する方法で、腕や肩の筋肉がよく発達している赤ちゃんによく見られるハイハイです。
肘ばいは、勢いよく肘を床について移動するので、赤ちゃんが肘を傷めないよう、硬い床は避けて畳やマットの上に寝かせてあげましょう。
高ばい(クマ歩き)
高ばいとは、両手と両足を床につけて身体を持ち上げ、両手とつま先で床を押したり蹴ったりして移動することです。
ハイハイの状態からさらに身体を持ち上げ、手の平と足の裏を使って移動する様子が四足歩行で移動するクマに似ていることから、クマ歩きとも呼ばれています。
赤ちゃんがハイハイを始める時期はいつから
赤ちゃんがハイハイを始める標準的な時期は、生後7~8ヶ月頃です。
ただし、赤ちゃんの成長発達は個人差が大きく、あくまでも目安です。
また、ハイハイを始める時期は、首すわりの完成や寝返り・寝返り返りを覚えた時期によっても変わります。
通常、赤ちゃんは首すわりが完成し、寝返り・寝返り返りを覚えた後にハイハイを始めるため、首すわりなどが早ければハイハイも早い時期に覚え、首すわりなどがゆっくりならハイハイもゆっくり覚える傾向があります。
ハイハイしない赤ちゃん
日本では、ハイハイしない赤ちゃんが増えていると指摘する専門家がいます。
赤ちゃんがハイハイしない原因としては、まず、ハイハイするだけの十分なスペースがないことが挙げられます。
現在の日本の住居は各部屋がドアや壁で細かく区切られている上、テレビ、テーブル、イス、ソファなど部屋のの中に物があふれかえっており、赤ちゃんがハイハイできるスペースが確保できないことが少なくありません。
狭いスペースではハイハイを楽しむことができませんし、赤ちゃんが家具の角などでケガをしないよう親がハイハイを制限する家庭もあり、ハイハイをしない(できない)赤ちゃんが増えているのです。
また、早い時期から一人歩きを指せようとして歩行器を使わせると、赤ちゃんがハイハイに興味を持たないことがあります。
注意したいのは、病気や障害が原因でハイハイができない赤ちゃんです。
足の筋肉量が少ない、下半身の筋肉の張りが弱いなどが原因であれば、ゆっくりでもいずれハイハイを覚えることが多いですが、病気や障害が原因の場合はそれらの原因を取り除く必要があります。
赤ちゃんの動きに違和感がある、生後1歳を過ぎてもハイハイしない場合は、小児科を受診させてみましょう。
赤ちゃんにハイハイを練習させる目安
赤ちゃんは、身体の筋肉や運動機能がハイハイできるレベルに達すれば、自らハイハイを始めます。
そのため、赤ちゃんが標準的な時期(生後7~8ヶ月)を過ぎてもハイハイしないからといって過度に心配する必要はなく、「ゆっくりと成長発達していく子なんだろう。」と思って見守ってあげましょう。
赤ちゃんの身体が未熟なうちにハイハイの練習をさせると、事故やケガで身体を痛め、ハイハイやその後の発達が遅れてしまうリスクが高くなります。
ハイハイの練習を始める目安はお座りの安定
赤ちゃんにハイハイの練習をさせる目安は、お座りが安定することです。
お座りが安定するには、背骨やその周辺の体幹、足腰の筋肉が発達する必要があります。
そしてこれらの部位の発達は、ハイハイをするためにも必要になるため、お座りの安定がハイハイができる身体になっているかどうかを見極める目安になるのです。
実際、お座りが安定した頃にハイハイを始める赤ちゃんが多いものです。
ただし、あくまで目安であり、赤ちゃんがハイハイを嫌がったり、四つん這いの状態で身体を支えられなかったりする場合は、無理に練習をさせず期間を置くようにしてください。
ハイハイしない赤ちゃんに練習させる方法
赤ちゃんにハイハイを練習させる方法は、以下のとおりです。
- うつ伏せで遊ばせる
- 赤ちゃんの足の裏に壁を作る
- 赤ちゃんの目の前におもちゃを置く
- 親が見本を見せて一緒にハイハイする
- 赤ちゃんの腰を持ち上げる
いずれの練習方法も、赤ちゃんがハイハイに興味を持つよう工夫する点が共通しています。
練習を始めてすぐにハイハイを始めることは稀ですが、練習を繰り返すうちに徐々に身体の動かし方を覚えていきます。
また、練習中の親子のスキンシップや親の声掛けが赤ちゃんのモチベーションになります。
ハイハイの練習1:うつ伏せで遊ばせる
日本の赤ちゃんは、仰向けに寝かせられている時間が長いため、うつ伏せの姿勢に慣れていません。
赤ちゃんがハイハイしたがらない場合、まずはうつ伏せの姿勢に慣れさせることから始めます。
うつ伏せで寝転んだ赤ちゃんの視界におもちゃを並べたり、親がうつ伏せになる姿勢を見せたりして、うつ伏せの楽しさを教えてあげましょう。
ハイハイの練習2:赤ちゃんの足の裏に壁を作る
赤ちゃんがうつ伏せの姿勢に慣れたら、赤ちゃんの足の裏の方に座り、赤ちゃんの足の裏の後ろに手で壁を作り、赤ちゃんが後ろに足を延ばせないようにします。
その状態で赤ちゃんの足の裏を軽く押すと、赤ちゃんは「後ろには進めないんだな。」と理解し、前の方へ身体を動かそうとします。
ハイハイの練習3:赤ちゃんの目の前にオモチャを置く
お気に入りのおもちゃを、赤ちゃんの手がギリギリ届かないところに置きます。
すると赤ちゃんは、目の前のオモチャに触れようと腕を伸ばし、届かないことが分かると身体を前に動かそうとします。
最初のうちは身体をひねったりねじったりしていますが、徐々に腕や足を使って身体を前に動かせるようになります。
ハイハイの練習4:親が見本を見せて一緒にハイハイする
赤ちゃんは、親の言動に興味を持つもので、親の一挙手一投足を観察して真似をしようとします。
乳児期の赤ちゃんにとっては、真似をすることが最大の学習方法なのです。
赤ちゃんが腕や足をうまく使えないようなら、親が見本を見せてあげることでハイハイの動きを覚えていきます。
赤ちゃんの顔の前よりも、赤ちゃんの横に並んだ方が真似がしやすいと考えられています。
ハイハイの練習5:赤ちゃんの腰を持ち上げる
赤ちゃんは、うつ伏せの状態から腕の力で上半身を起こす動きは比較的早く覚えることが多いですが、腰を持ち上げて膝立ちになる動きをなかなか覚えないことがあります。
赤ちゃんが腰を持ち上げられずにいるようなら、腰に手を当ててゆっくり持ち上げてあげ、その姿勢で前に進むよう促しましょう。
赤ちゃんがハイハイを始めた後の部屋の安全対策
ハイハイを始めた赤ちゃんは、移動範囲が一気に広がり、興味関心を持つ対象も多くなります。
そのため、親としては、赤ちゃんの事故やケガを予防するために、部屋の安全対策を一から見直す必要があります。
気を付けておきたい部屋の安全対策は、以下のとおりです。
- ハイハイスペースの確保
- マットやカーペットを敷く
- こまめな部屋の掃除
- コンセントを隠す
- 「角」対策
- 扉・窓・引き出しは開かないようにしておく
- 誤飲するリスクがある物を取り除く
ハイハイできるスペースの確保
まず、赤ちゃんがハイハイしても安全なスペースを確保しましょう。
狭いと思うようにハイハイできませんし、自己やケガのリスクも高くなります。
マットやカーペットを敷く
リビングのフローリングの上でハイハイさせると、膝が痛くなったり、バランスを崩して頭をフローリングにぶつけたりするリスクがあります。
赤ちゃんがハイハイするスペースには、厚みがあって柔らかいマットやカーペットを敷くと安全・安心です。
こまめな部屋の掃除
マットやカーペットの上はごみやほこりが溜まりやすいものです。
赤ちゃんがホコリを吸い込んだり、誤ってゴミを飲み込んだりしないよう、こまめな掃除を心がけましょう。
コンセントを隠す
赤ちゃんは、コンセントに強い興味を持ちます。
ハイハイする時の目線の高さにあり、何かが入りそうな穴が空いているので、指やおもちゃを入れようとします。
コンセントカバーやテープなどを利用して隠しておきましょう。
「角」対策
部屋の扉、テレビラック、本棚、テーブル、イスなど、部屋の中にはいたるところに「角」があります。
赤ちゃんがぶつかってケガをしないよう、コーナーガードを設置するなどして対応しましょう。
扉・窓・引き出しは開かないようにしておく
赤ちゃんは、開けたり閉めたりするのが大好きです。
赤ちゃんが移動できる範囲の扉・窓・引き出しについては、赤ちゃんが指や手を挟んだり、転落したりするリスクがあるため、赤ちゃんが開けられないようにしておきましょう。
扉などの前にゲートやベビーサークルでバリケードを張っておくことも有効です。
誤飲するリスクがある物を取り除く
赤ちゃんは、掴んだ物を何でも口に入れて確かめようとします。
赤ちゃんが口に入れて危険な物は、ハイハイで移動できる範囲に置かないようにしてください。
例えば、電池、薬、タバコ、つまようじ、画鋲、防虫剤、針、クリップ、ヘアピンなど、部屋の中に何げなく置いてある物でも、赤ちゃんにとっては興味関心を持つ対象であり、口に入れるリスクがあります。
まとめ
赤ちゃんがハイハイを始める時期ややり方は個人差が大きく、ズリバイ、肘ばい、ハイハイ、高ばいと順序を踏むこともあれば、ハイハイをしないで一人歩きを始めることもあります。
ハイハイを始める時期が多少遅れても、基本的には経過観察で問題ありませんが、赤ちゃんの動きに違和感がある場合は念のため小児科を受診させておくと安心です。
また、親としては、赤ちゃんがハイハイを始めた後は部屋の安全対策を見直し、自己やケガのリスクをできるだけ減らす配慮をしてあげましょう。