赤ちゃんは、ちょっとした刺激で体調を崩しますし、思いもよらない怪我もします。
そのため、どれだけ体調管理や安全面に気を付けていても、赤ちゃんを病院に受診させる機会が多くなりがちです。
また、出産育児一時金などで補てんできない分娩費などもかさみます。
赤ちゃんの医療費については乳幼児医療費助成制度で大部分カバーできるにしても、1年間を通して家庭の医療費を確認すると、相当な金額になっているものです。
そこで利用できるのが医療費控除です。
この記事では、医療費控除の概要、計算式、異旅費控除の対象になるものとならないもの、年末調整との関係について紹介します。
医療費控除とは
医療費控除とは、医療費が多くかかった年に、確定申告で申告することにより、かかった医療費の一部を税金から控除することです。
1月から12月の1年間で、出産、妊婦健診、赤ちゃんの診療などに支払った医療費等の実質負担額が10万円を超えた場合、超えた金額をその年の所得から差し引くことができます。
年間所得が200万円未満の場合は、「所得金額×5%」の額を差し引くことができます。
医療費控除の上限は200万円で、それ以上は控除の対象になりません。
出産育児一時金等で補填された場合
出産育児一時金等で医療費が補填された場合は、その金額を差し引く必要があります。
差し引く必要があるのは、次のようなものです。
- 健康保険から支給されたもの(出産育児一時金、配偶者出産育児一時金、高額医療費など)
- 生命保険会社や損害保険会社から支払われたもの(医療保険金、入院給付金、傷害費用保険金など)
- 医療費や給付金の補填のために支払われたもの
- 損害賠償金の補填のために支払われたもの
医療費控除の計算式
以上の内容を踏まえた医療費控除額と還付金(医療費控除により戻ってくる金額)の計算式は、次のとおりです。
医療費控除額の計算式
- 1年間に支払った医療費の合計金額-保険金などで補填されたの金額-10万円(年間所得が200万円未満の場合は、「所得金額×5%」)=医療費控除額(上限200万円)
還付金(医療費控除により戻ってくる金額)の計算式
- 医療費控除額(上限200万円)×所得税率=還付金(医療費控除により戻ってくるお金)
所得税率は、年間所得によって、次のように決まっています。
- 195万円以下:5%
- 195万円以上330万円以下:10%
- 330万円以上695万円以下:20%
- 695万円以上900万円以下:23%
- 900万円以上1800万円以下:33%
- 1800万円以上4000万円以下:40%
- 4000万円超:45%
医療費控除の対象になるものと、対象にならないもの
妊娠や出産、赤ちゃんにかかる費用のうち、医療費控除の対象になるものと、対象にならないものは、次のとおりです。
医療費控除の対象になるもの
まず、医療費控除の対象となる者から確認します。
妊娠中にかかる費用
- 妊婦の定期健診費
- お母さんの診療費・治療費
- 治療に必要な薬剤費
- 医師が必要と認めた不妊治療の費用
- 特定健康検査費・特定保険指導費
- 通院や入院のための交通費(公共機関の利用が難しい場合は、タクシー代も含まれる)
- 虫歯の治療費
- 治療のためのマッサージ・鍼灸治療費など
分娩と出産後にかかる費用
- 分娩費
- 助産師の分娩介助料
- 流産した場合の手術費・通院費・入院費
- 母体保護法にもとづく理由で妊娠中絶したときの手術費
- 入院費用・食事代(日用品や電気代は含まない)
- 診療費、治療費
- 治療に必要な薬剤費
- 赤ちゃんの定期健診費など
医療費控除の対象にならないもの
次に、医療費控除の対象とならないものです。
妊娠中にかかる費用
- 妊娠検査薬代
- 医師の指示によらない差額ベッド代
- 会社などに提出する診断書代
- 健康なときの定期健診や人間ドック費
- 通院に使う自動車のガソリン代や駐車場代
- 入院中の日用品代など
分娩と出産後にかかる費用
- 里帰り出産するための交通費
- 無痛分娩講習などの受講料
- 母体保護法にもとづかない妊娠中絶の手術費
- 赤ちゃんの日用品代
- 薬局で購入した薬剤費
- 予防接種(任意接種)代
- 医師への謝礼など
医療費控除の申請方法
医療費控除の申請は、確定申告で行います。
確定申告とは
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得(課税される収入から、必要経費を差し引いたもの)を計算した申告書を税務署に提出して、納める所得税の金額を確定する手続きです。
毎年、2月中旬から3月中旬に、前年度の確定申告を行います。
確定申告は、税務署や特別に設置された会場の他、「e-Tax」というサイトで行うこともできます。
確定申告で医療費控除を申請するために必要なものは、次のとおりです。
会社員の場合
- 源泉徴収票
- 医療費の支出を証明する書面(領収書など)
- 領収書のない費用に関する支払明細票(通院のための交通費など)
会社員以外の場合
- 医療費の支出を証明する書面(領収書など)
- 領収書のない医療費に関する支払明細票(通院のための交通費など)
年末調整で医療費控除ができるか
会社員の場合は年末調整(年末に、給与所得の源泉徴収義務者が1年間の給与総額から所得税額を算出し、税金の源泉徴収分との過不足を精算する手続き)があります。
年末調整で医療費控除を請求できると思っている人もいますが、年末調整ではできません。
そのため、会社員であっても自分で確定申告を行う必要があります。
まとめ
税金に関して苦手意識を持っている人は多いですが、うまく制度を利用すれば家計の助けになります。
反対に利用できる制度を利用しないままだと、子どもが大きくなるにつれて養育費様がかさみ、家計を圧迫することになるため、こまめに税金について調べることが大切です。
自分一人で分からない場合は、会社の税務担当者に相談すれば、気軽に教えてくれるはずなので、ぜひうまく利用してください。