赤ちゃんが血の混じったウンチ(血便)を排泄したのを見て、驚いたことはありませんか?
赤ちゃんの血便には、乳児期の赤ちゃんによく見られる問題の少ない血便と、病気や障害などが原因の治療を要する血便があります。
赤ちゃんの身体は未熟なので、ちょっとした刺激でも肛門や腸の粘膜が傷ついて出血してうんちに混じることがありますが、家庭の応急処置でも傷が改善しますし、成長発達にも影響を及ぼさないことが多いものです。
一方で、病気や消化器系の障害が原因で血便が出ることもあり、こちらは早期に治療を受けさせないと命に関わることもあります。
親としては、赤ちゃんの血便を発見した場合、赤ちゃんの様子や便の状態を観察し、病院を受診させるか否か適切に判断することが求められます。
この記事では、赤ちゃんの血便の原因と対処法について紹介します。
赤ちゃんの血便の原因と対処法
赤ちゃんが血便を出す原因は複数あり、それぞれ対処法が異なります。
赤ちゃんの血便の原因:母乳やミルク
赤ちゃんは、大人に比べて腸内環境が未熟なので、ちょっとした刺激で腸の粘膜が傷つきやすいものです。
特に、新生児期から生後3月頃までは、母乳やミルクの成分である乳糖が粘膜に反応し、腸の粘膜を傷つけて出血することがあります。
腸から肛門へたどり着くまでに距離があるため、水っぽいうんちの中に赤黒い血が混じって出てきます。
対処法
母乳やミルクが原因の血便は、月齢とともに腸内環境が発達することで改善されていくので、特別な対処は必要ありません。
赤ちゃんが発熱したり、食欲がなくなったりした場合は、他の原因で血便が出た可能性を考えて小児科を受診させましょう。
赤ちゃんの血便の原因:便秘
赤ちゃんのうんちは、母乳とミルクだけを飲んでいる時期は、水気が多くて一日に何度も出ますが、離乳食を始めた後は、徐々に硬くなって回数も減り、大人の便に近くなっていきます。
一方で、便の変化に比べて肛門の発達はゆっくりで、硬くなったうんちをしっかり出すための力が身につく前に便が硬くなり、便秘がちになる赤ちゃんがたくさんいます。
便は、便秘になって体内にとどまる時間が延びるほど固くなり、出した時に肛門の周りの皮膚や粘膜を傷つけることがあります。
便秘が原因の血便の場合、血の色は真っ赤です。
また、肛門周辺に傷が確認できるので、比較的簡単に見分けられます。
対処法
離乳食を始めた赤ちゃんの多くが経験する血便で、特別な対処は必要ありません。
水分をいつもより多めに飲ませ、食物繊維が多い食材を意識してたくさん食べさせるとともに、おなかのマッサージや綿棒浣腸で排便を促しましょう。
発熱や赤ちゃんの元気がない場合は、念のため受診させることをおすすめします。
赤ちゃんの血便の原因:痔
赤ちゃんの血便の原因で常に上位にあるのが「痔」です。
赤ちゃんに多いのは、硬い便で肛門が切れて生じる「切れ痔」です。
切れ痔は、排便時に強い痛みを伴うため、泣き出してしまう赤ちゃんが多いものです。
切れ痔の場合の便に混じるのは真っ赤な鮮血です。
切れ痔が酷い場合は、排便の度に赤ちゃんが大泣きし、血が垂れたりおしりナップに血がついたりします。
対処法
便秘解消と便を柔らかくすることが大切です。
傷が酷い場合は、小児科を受診して痔用の塗り薬を処方してもらいましょう。
なお、切れ痔で小児科を受診した時に赤ちゃんが便秘がちな場合、浣腸を勧めてくる医師が多いものです。
浣腸自体は問題ありませんが、看護師が乱暴に浣腸を挿入して赤ちゃんの肛門が傷つけるケースが後を絶たないので、慎重な対応をお願いしましょう。
心配な場合は、浣腸を処方してもらい、家で使用するのが確実です。
赤ちゃんの血便の原因:腸重積症(赤くて粘り気のある血便)
腸重積症とは、腸が重なってねじれる(腸の一部が別の腸に入り込む)病気です。
生後4ヶ月から1歳までの発症率が高く、放置すると、腸の重なった部分が壊死する重い病気です。
原因は特定されていません。
腸重積症を発症すると、赤ちゃんは、腸が重なった激痛で身体を丸めて大泣きしますし、腸がふさがって母乳やミルクが押し戻されるため、周期的に嘔吐するようになります。
また、腸が重なった部分の血管が破れて出血し、赤くて粘り気のあるうんちが出ます。
「ジャムのようだ。」とたとえている書籍やサイトが多いようです。
対処法
腸重積症は自然治癒せず、放置すると命の危険があるので、少しでも疑わしいと感じたらすぐ小児科を受診させてください。
発症から1日以内の場合は、肛門から空気や造影剤を入れて、重なり合った腸を元通りに戻す治療が行われます。
腸が元通りにならない場合や、発症から時間が経過している場合は、重なった腸を引き出すか、壊疽した腸を切り取って残った腸をつなぎ合わせる手術を受けることになります。
赤ちゃんの血便の原因:新生児メレナ(ドロッとした黒や赤の血便)
新生児メレナとは、消化管から出血する新生児の病気で、主な症状は吐血と血便です。
ビタミンK不足や消化管の異常が原因で、ほとんどが生後3週間以内に発症し、進行すると脳内出血を起こすリスクがあります。
新生児メレナを発症すると、うんちはドロッとして黒っぽくなり、症状が悪化すると赤色に変わっていきます。
対処法
自然治癒しないので、新生児メレナに特徴的な血便や吐血があったら、すぐ小児科を受診して治療を受けましょう。
ビタミンK不足が原因の場合は、ビタミンK2シロップが処方されます。
母乳を飲ませている場合は、小松菜などビタミンKを多く含む食材をお母さんがたくさん食べることで、母乳をと通して赤ちゃんにビタミンKが供給されます。
消化管の異常の場合は、症状の程度により、血小板の輸血、胃の洗浄、胃粘膜を保護する薬の投与、手術などが行われます。
赤ちゃんの血便の原因:ロタウィルス胃腸炎(白っぽくて水のような血便)
ロタウィルス胃腸炎とは、ロタウィルス感染による胃腸炎です。
ロタウィルス胃腸炎の主な症状は、激しい嘔吐、白っぽい水のような便が何度も出る下痢症状、発熱、腹痛、食欲の減退で、便の中に血が混じることもあります。
対処法
自然治癒しませんし、下痢や嘔吐を止める薬も見つかっていません。
そのため、ロタウィルス胃腸炎を発症したらすぐ小児科を受診し、脱水症状を予防するために水分補給をしっかりと行って、症状が治まるのを待つしかありません。
脱水症状を起こすと点滴治療を行い、酷い時には入院することもあります。
赤ちゃんの血便の原因:ストレス
赤ちゃんは、大人以上にストレスを感じやすいものです。
お父さんお母さんが喧嘩ばかりしている、スマホに夢中でかまってもらえない、虐待される、0歳のうちから保育園に預けられて親子で一緒にいられないなど、赤ちゃんがストレスを感じる原因は無数にあります。
しかし、ストレスをうまく表現したり発散したりする術を持たないため、抱え込んでしまいやすいものです。
その結果、ストレスで胃潰瘍などの内臓疾患を引き起こして血便を出すことがあります。
対処法
理想的なのは、「赤ちゃんが安心して過ごせる家庭環境を整えること」ですが、各家庭の状況により難しいこともあるはずです。
しかし、赤ちゃんと一緒にいる時はできるだけ遊び、異常があればすぐ家族や小児科に相談するくらいは最低限実践しましょう。
まとめ
赤ちゃんの血便の原因は問題のないものから治療が必要なものまで複数あり、それぞれ対処法が異なります。
家庭でできることは限られていますが、親としては病院を受診させるか否かについて適切な判断ができる程度の知識は持っておきたいものです。