赤ちゃんのお世話をしていて、以下のような赤ちゃんの行動を見かけたことはありませんか。
- 赤ちゃんの目を見るとフッと目をそらす
- 離れているときはずっとこちらを見ていたのに、抱っこしたとたんキョロキョロして目を合わせなくなる
- 赤ちゃんの顔をジッと見つめても全然目が合わない
実は、赤ちゃんと目が合わない、赤ちゃんが目をそらす・目を合わせないという経験があるお父さんお母さんは少なくありません。
また、自閉症スペクトラムをはじめとする発達障害の症状に「目をそらす、目を合わせない。」というものがあり、赤ちゃんが目を合わせてくれないと「うちの子は発達障害なのではないか。」などと心配になってしまう親もいます。
どうして赤ちゃんは目をそらしたり、目を合わせなくなったりするのでしょうか?
また、赤ちゃんが目を合わせないと発達障害の可能性があるのでしょうか?
この記事では、赤ちゃんと目が合いにくくなる時期、目が合わない原因、自閉症スペクトラムや発達障害との関係について紹介します。
赤ちゃんの視力と見る力
最初に、赤ちゃんの視力と見る力の発達について確認しておきましょう。
赤ちゃんは、生まれたての頃には周りがほとんど見えておらず、ごく限られた距離の狭い範囲にのみ焦点を合わせるのがやっとですが、時間の経過とともに視力が向上し、生後6ヶ月頃に視力が0.1~0.2になり、近くの人の顔を区別したり、物を見分けたりできるようになります。
また、色を認識する、両目の焦点を合わせる、動くものを追う、奥行きを認識するなど、見る力も、月齢とともに向上していきます。
ただし、まだ遠くの人や物ははっきりとは見えていません。
生後1歳頃になると、視力が0.3くらいになり、ボタンや紙くずなど小さい物パンくずなど小さい物まで見えるようになりますし、空間を立体的に把握できるようになります。
少し遠くの人や物でも区別がつくようになります。
月齢 | 視力の目安 |
新生児 | 0.02 |
生後3ヶ月頃 | 0.04~0.08 |
生後6ヶ月頃 | 0.1~0.2 |
生後1歳頃 | 0.3 |
生後1歳以降も視力は向上し続けて、生後3歳頃には大人と同じ視力になります。
赤ちゃんと目が合いにくくなる時期
新生児の頃は視力が弱く、赤ちゃんの焦点が合う位置に顔を持っていかないと、目が合うどころか、こちらを向いてもらうこともできません。
親としては目が合っているように思えても、赤ちゃんには親の顔がよく見えていないことが多いものです。
その後は徐々に視力が向上し、視界が開け、焦点が合う範囲も広くなっていき、生後1~2ヶ月頃には、赤ちゃんの目を見るとジッと見つめ返してくれるようになります。
大人の場合、他人と目が合うと下を向いて視線をそらすことがありますが、赤ちゃんは相手の目に関心を持ってジッと見つめ続けます。
しかし、生後6ヶ月頃になると赤ちゃんと目が合いにくくなり、目が合ってもそらされてしまうことが多くなります。
赤ちゃんと目が合わない、赤ちゃんが目をそらす原因
赤ちゃんと目が合わない、目が合っても逸らされてしまう原因について見ていきましょう。
低月齢の頃は見えていない
生後1~2ヶ月の赤ちゃんは、目を見ると見つけ返してくれると書きましたが、低月齢のうちは赤ちゃんの両目の焦点が合い、対象がよく見える場所限定の話です。
低月齢の赤ちゃんは、視力が低い上に視野が狭く、両目の焦点も限られた距離にしか合わせることができません。
そのため、大人からは見えているように思えても、実は見えていなかったりボンヤリとしか見えていなかったりすることが多いものです。
当然ですが、親がはっきり見えていない場合、目線は会いにくいものです。
赤ちゃんが目をそらすように見えるのも、もともと親の顔が見えていないため、何かに目移りしただけです。
周りに目移りしている
すでに書きましたが、赤ちゃんは、月齢とともに視力や見る力が向上し、人や物をはっきりと見ることができるようになります。
生後6ヶ月頃には、寝返りや寝返り返りを覚え、お座りを始めることもあるなど、それまでの寝たきりの生活から一変して視界が広がります。
そのため、お父さんお母さんが近くにいて赤ちゃんを見つめても、赤ちゃんとしては見慣れた顔よりも周囲の目新しい物の方が気になり、キョロキョロと周りを見ようとするため、目をそらすように見えるのです。
一旦は目が合っても、同じ理由ですぐ周囲の気になる物に視線を移してしまいます。
不安を感じている
赤ちゃんは、生後6ヶ月頃になると、顔で人の区別ができるようになります。
そのため、見慣れない人にジッと見つめられると、緊張して不安を感じ、目をそらしてしまいます。
また、赤ちゃんは、人の顔だけでなく表情もしっかり観察しており、相手の気持ちを敏感に察知します。
見つめているのがお父さんお母さんでも、表情が曇っていたり不機嫌そうだったりすると不安を感じ、目を合わせなくなることがあります。
「目は口程に物を言う」という諺がありますが、赤ちゃんは大人の目から色々なことを感じ取っているのです。
怒っている、すねている
生まれたての赤ちゃんは、とにかく泣いて要求し、親にお世話をしてもらおうとしますが、月齢を経るにつれて様々な表現を獲得します。
視線もその一つです。
「寂しくて泣いているのに、すぐ来てくれなかった。」、「お腹がすいているのに、なかなかご飯をくれなかった。」など、思い通りにならないことがあると、怒ったりすねたりして目をそらすことがあります。
大人同士でもケンカしている相手の方を見なかったり、目が合うと露骨に目をそらしたりすることがありますが、似たようなことを赤ちゃんもすることがあるのです。
赤ちゃんの性格
赤ちゃんの性格は、遺伝、親の接し方、日常生活を送る環境などの影響を受けるもので、一人一人異なります。
物怖じせず見つめられると喜ぶ赤ちゃんもいれば、引っ込み思案で見つめられると不安を感じる赤ちゃんもいます。
赤ちゃんと目が合わない原因は自閉症スペクトラムや発達障害?
自閉症スペクトラムや発達障害と診断された人の生活史を紐解くと、乳児期に「目が合わない、目をそらす」という症状が見られることがあります。
しかし、自閉症スペクトラムや発達障害には複雑な診断基準があり、「目が合わない、目をそらす」という特徴だけでは診断されることはありません。
なお、乳児期のうちに見られる自閉症スペクトラムや発達障害が疑われる主な症状は、以下のとおりです。
- 人見知りしない
- 後追いしない
- 一人を嫌がらない
- 抱っこを嫌がる
- 名前を呼んでも振り向かない
- あやしても反応がない
- 真似をしない
- 指さししない
「目が合わない、目をそらす」以外に複数の症状が見られる場合は、小児科や保健センターの職員などに相談してみてもいいでしょう。
ただし、通常、自閉症スペクトラムや発達障害と診断されるのは生後3歳以降であり、相談のみで終わることもあります。
まとめ
赤ちゃんと目が合わない、赤ちゃんが目をそらす原因は、赤ちゃんの視力や情緒面の発達と密接に関連しています。
親としては不安になるかもしれませんが、赤ちゃんがしっかり成長している証なので、温かく見守ってあげてください。
発達障害との関係を心配する親もいますが、目が合わない、目をそらすだけで発達障害と診断されることはありません。
どうしても気になる場合は、一度、小児科などに相談してみてください。