知育ノート

赤ちゃん、幼児、子供の力を伸ばす知育、知育玩具、関わり方やそれらに関する知識を紹介しています。

ソーシャルスキルトレーニング・SSTとは?小学校のSST指導案とは?

前回の記事で、9歳の壁・10歳の壁の概要(根拠はないが、経験的には認められることなど)、9歳・10歳の子供の特徴、壁を乗り越える教育・関わりについて紹介しました。

10歳前後の子どもは、考える力、運動能力、気持ちや感情、友達関係の持ち方、学習などが成長・変化していきます。

そして、子ども自身がこの時期の成長・変化に戸惑い、時につまづいたり劣等感を抱いたりします。

中でも、特につまづきやすいのが「社会性」です。

社会性は、子どもの自主性や主体性に任せて放っておいてもなかなか身につきにくいものですし、年齢相応の社会性が十分に育まれないと、その後の社会生活に大きな影響が及び、生きづらさを感じる要因となってしまいます。

社会性を育むプログラムとして世界的に実践されているのが、この記事で紹介するソーシャルスキルトレーニングです。

ソーシャルスキルトレーニングは、10歳の壁対策としても注目を集めており、10歳前後の子どもへの関わり方を考える上で大切なものです。

この記事では、ソーシャルスキルトレーニングとは何か、ソーシャルスキルの概要、ソーシャルスキルトレーニングの具体的なやり方について紹介します。

ソーシャルスキルトレーニング(Social Skills Trainning)とは

ソーシャルスキルトレーニングとは、子どもの社会性を育むための訓練プログラムです。

英語では「Social Skills Trainning」と表記し、頭文字をとってSSTと呼ばれたり、ソーシャルスキルトレーニングと呼ばれたりしています。

ソーシャルスキルは無数に存在するため、ソーシャルスキルズトレーニングが正しいのですが、頃が良くないのでソーシャルスキルトレーニングと呼ばれることが多くなっています。

ソーシャルスキルトレーニングは、発達障害の子どもの療育、非行少年の指導、幼児教育、統合失調症のリハビリなど幅広い分野で取り入れられて効果を上げています。

また、教育現場においても、かなり前からソーシャルスキルトレーニングの技法や理論が取り入れられていました。

最近は、発達障害のある子どもやグレーゾーンの子どもが増えてきたこともあり、小学校や中学校において、ソーシャルスキルに関する学習指導案が作成、実践されるようになってきました。

ソーシャルスキルとは

ソーシャルスキルとは、社会の中で他人と関わり、適切な関係性を保って生活していくための技術・能力です。

英語では「social skills」と表記し、日本では社会技能と訳されることもありますが、ソーシャルスキルと呼ばれることが多くなっています。

ソーシャル「スキル」となっていますが、ソーシャルスキルは一つではなく無数に存在しており、正確には英語表記のとおりソーシャル「スキル」です。

適切な関係性というのは「誰とでも仲良くなること」ではなく、「立場、場所、相手との関係性などに応じて適切な関係を築くこと」です。

例えば、学校における教師やクラスメイトと適切な関係を持って日常的に付き合っていくためのスキルです。

親友同士になったり、先生に全幅の信頼を寄せられる存在になったりするためのスキルではなく、あくまで日常生活に支障が生じない程度の対人関係を維持するためのスキルと考えると分かりやすいでしょう。

なお、世界保健機関(WHO)は、ソーシャルスキルを「日常生活の中で起こる問題や課題に、自分で、創造的で効果のある対処ができる能力」と定義しています。

ソーシャルスキルの要素

ソーシャルスキルには、たくさんの要素があります。

大きく分けるとすれば、①自分に関するスキル、②相手を理解するためのスキル、③相手と互いに理解しあうスキルの3つになります。

それぞれのスキルについて見ていきましょう。

自分に関するスキル

自分に関するスキルとは、自分のことを理解し、適切な言動を判断・表現するとともに、言動の結果を振り返って次につなげるスキルです。

  • 自己理解:ある物事に対して、自分がどう感じ、どう考えて、何がしたいのかを自分が理解する力
  • 判断力:自分が感じたこと、考えたこと、したいことをどう表現するかを判断する力
  • 表現力:判断したことを表現する力
  • 内省力::自分の行動の結果を振り返り、その後の行動を修正する力

判断力には、自己理解に基づいて、情報を収集・整理して物事の全体像を把握する力や、行動に伴う結果や周囲の反応を予測する力、適切な行動やその順序を決める力が含まれています。

表現力には、言語で表現する力、非言語で表現する力、行動で表現する力があります。

内省力には、行動を分析する力、行動や言動を記憶しておく力、自分の感情やストレスを受け止める力、物事を客観的に観察する力があります。

相手を理解するためのスキル

 相手を理解するためのスキルとは、相手が何を感じ、何を考え、何をしたいのかを察する(共感する)力です。

具体的なスキルは、次のとおりです。

  • 観察力:相手を客観的に観察する力
  • コミュニケーション能力:相手の言語的・非言語的な表現の意味を読み取る力
  • 傾聴力:相手の話をさえぎらず最後まで聞く力
  • 概念化と抽象化:相手の言動をまとめて理解する力
  • 記憶力:相手の言動を記憶する力
  • 多面性理解力:同じ状況、発言、態度でも、人によってとらえ方が違うことを理解する力

当たり前のように思うかもしれませんが、いずれのスキルも生まれながらに持っているものではなく、対人関係の中で身につけたり、親などの大人から教えられたりして後天的に獲得されるものです。

そのため、獲得の機会がなかったり少なかったりして、スキルが身につかないまま成長してしまうことも珍しくありません。

相手と互いに理解しあうスキル

相手と互いに理解しあうスキルとは、自分と相手が感じたこと、考えたこと、したいことを理解し、それらが異なるものである可能性も認識した上で、お互いが納得できる言動をするためのスキルです。

具体的なスキルは、次のとおりです。

  • 自分も相手も大切にしながら自己主張する力
  • 相手を理解し、共感する力
  • 感情的にならず、お互いのためになることを判断する力
  • ストレスを感じた時に対処する力

日常場面で身につけるソーシャルスキル

ソーシャルスキルの要素を紹介しました。

ここからは、子供が学校生活や友人関係で身につける(必要になる)ソーシャルスキルについて見ていきましょう。

学校生活で身につけるソーシャルスキル
  • 教師の立場と役割を理解する力
  • 学校のルールを理解する力

学校は集団生活の場です。

たくさんの子供が集団生活を送るために、校則をはじめとするルールがあり、クラスを管理・運営する「先生」という立場の大人がいます。

子供は、学校という新しい社会に飛び込み、まず、先生の立場と役割を理解し、先生の指示に従うという基本的なルールを身につけます。

そして、学校だけでなく、家庭やそのほかの社会にもルールがあることを理解し、自分の希望や欲求があっても、ルールを守って行動しようという姿勢を育てていきます。

また、何か問題が起きた時も、感情や気分に任せて行動するのではなく、先生を頼ったり、ルールに従ったりして対応する力を身につけていきます。

友人関係で身につけるソーシャルスキル
  • 他人と一緒に行動するスキル
  • 友人をつくるためのスキル
  • 友人関係を維持するためのスキル
  • 友人関係で問題が起きた時に対応するためのスキル

子供は、ルールを守って学校生活を送り、クラスメイトと共同作業を行う中で、クラスへの所属意識を持つようになり、友人に仲間意識を持つようになります。

そして、あいさつ、相手の話をきちんと聞く、相手の質問に答える、相手に自分の意見を伝える、相手の気持ちや考えを察する、たくさん話をするなど、友人関係を築くためのコミュニケーション能力を身につけていきます。

コミュニケーション能力には、場に即した表情や身振り手振り、ボディタッチなど、言葉によらないものも含まれています。

また、嘘をつかない、悩みを相談する、相談されたら助ける、約束を守るなど、友人との関係性を維持するためのスキルも身につけていきます。

さらに、友人関係を維持する中で起こる意見の対立やケンカなどを乗り越えるうちに、対人トラブルを適切に対処するためのスキルも身についていきます。

ソーシャルスキルという視点を持つことの大切さ

ソーシャルスキルという視点を持つことで、子どもの課題や問題の原因を「性格」や「資質」ではなく、「学習不足」、「正しいやり方を知らない」、「苦手」などと考えることができます。

それによって、課題や問題に応じたトレーニングのやり方を具体的に提案、実践できるようになります。

ソーシャルスキルを十分に獲得できていない子どもが増えている

本来、ソーシャルスキルは、乳児期~幼児期の5、6年の間に、パパママや身近な大人や子供から教えてもらったり、彼らをモデルとしてその行動を観察したりしながら身につけていくものです。

ところが、核家族化や共働き家庭が増加し、親子が一緒にいる時間や、親族が子育てに関わる機会が減少したことで、以前に比べて家庭の監護力が低下していると言われています。

また、少子化や近隣住民との関係の希薄化により、近所の子どもと遊ぶ機会も減少しており、ソーシャルスキルを教わったり、友達やきょうだいを観察して学び取ったりすることが難しくなっています。

年齢相応のソーシャルスキルが育まれなかった場合

子どもは、幼児期までに年齢相応のソーシャルスキルが育まれなかった場合、小学校に入学しても友達の輪に入れず、ますますソーシャルスキルを育む機会を失います。

そして、そうした状況に不満やストレスを抱え込み、粗暴な行動で発散もしくはアピールしたり、反対に引きこもりがちになったりします。

日本の小学校では、友達と仲良くできる、大人の言うことを聞いて集団行動ができるといったことが評価される傾向があるため、ソーシャルスキルの低い子供は、大人からもネガティブなレッテルを貼られがちです。

その結果、友達とも大人とも良い関係を築くことができないまま学校生活を過ごすことになってしまうのです。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)のやり方

ソーシャルスキルの話が長くなりましたが、以下、ソーシャルスキルトレーニングの具体的なやり方を確認していきます。

ソーシャルスキルトレーニングの実践は、6つのステップで行われるのが基本です(実践主体によって異なることがあります。)。

  1. ウォーミングアップ(アイスブレーキング)
  2. インストラクション(教示、導入説明)
  3. モデリング(モデルを見せる)
  4. リハーサル(子どもに実践させる)
  5. フィードバック(リハーサルの良い点や気になる点を伝える)
  6. ホームワーク(課題場面での実践)

SSTのやり方1:ウォーミングアップ(アイスブレーキング)

いきなり、ソーシャルスキルトレーニングを始めても、子どもは動揺したり恥ずかしがったりして、なかなか思うように取り組んでくれません。

最初は、簡単なゲームやストレッチなどで子どもの緊張を解き、トレーニングへのモチベーションを高めさせることが大切です。

SSTのやり方2:インストラクション(教示、導入説明)

トレーニングで取り上げるスキルやそれを使用する場面について子どもに説明します。

取り上げるスキルについて、子どもが「確かに大切だ。練習しよう。」と思えるような話し方や伝え方を工夫することが大切です。

また、言葉だけの説明では十分理解しにくい子どもがいる場合は、図表など視覚的な刺激を使用しても良いでしょう。

ある程度、関係性のできている子どもをトレーニングする場合は、ここから始めても良いでしょう。

SSTのやり方3:モデリング(モデルを見せる)

 取り上げるスキルについて、スキルを使って相手とうまくいっている場面と、相手とうまくいかない場面を見せます。

その上で、子どもに、どこが良くてどこが悪いのかを考えさせたり、伝えたりします。

SSTのやり方4:リハーサル(子どもに実践させる)

取り上げるスキルについて、子どもに何度も実践させる段階です。

子どもは、リハーサルを繰り返すことで、ソーシャルスキルを体得し、対人関係における行動パターンを増やしていくことができるのです。

SSTのやり方5:フィードバック(リハーサルの良い点や気になる点を伝える)

淡々とリハーサルを繰り返すだけでは、子どもは、うまくできているのかどうか分からず、モチベーションも下がってしまいます。

良い点は褒め、気になる点は指摘してあげて、子どものモチベーションやトレーニングの効果を高めましょう。

褒めたり指摘したりする時のポイントは、「具体的に」伝えることです。

例えば、「相手の顔を見て話すと、もっと良いね。」、「うなづきながら話を上手に聞けたね。」という感じです。

SSTのやり方6:ホームワーク(課題場面での実践)

ソーシャルスキルトレーニングは、日常場面における子どもの行動に課題や問題が見られる場合に行うものです。

そのため、トレーニングでスキルを体得して終わりではなく、子どもがスキルをうまく使って課題や問題が見られる日常場面を切り抜けることを目指すことになります。

トレーニングでスキルを獲得するのも、日常場面での応用できるようになるのも、相当の時間がかかります。

まずは、パパママが投げ出さないことが大切です。

その上で、子どもが投げだしそうになったら、モチベーションを保てるような働きかけを行ってあげましょう。

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小学校、中学校のSST学習指導案

学習指導案とは、授業を行う前に、教師が授業の目標や具体的な教え方、時間配分などを書き込む書類のことです。

小学校や中学校といった教育現場では、ソーシャルスキルトレーニングを学ぶ授業が積極的に行われており、そのための学習指導案が作られています。

学習指導案では、学校やクラスの課題や問題と、それを克服するために子どもに身につけさせたいソーシャルスキル、具体的な授業の展開を書き込みます。

授業の展開は、①導入、②展開、③まとめの3段階で構成されています。

小学校、中学校のSST指導案:導入部分

①の導入部分は、ウォーミングアップとインストラクションを行い、子どもの緊張を解き、授業の狙いを伝えて、モチベーションを高めさせます。

ふざけないこと、悪口を言わないこと、恥ずかしがらないことなど、注意事項を伝えておきます。

小学校、中学校のSST指導案:展開部分

②の展開部分は、モデリング、リハーサル、フィードバックを行い、身につけさせたいスキルを体験させて、意見を出し合います。

クラス単位で行う場合は、モデリングはクラス全体で行い、リハーサルとフィードバックは班ごとに分かれさせることが多いものです。

小学校、中学校のSST指導案:まとめ

各斑から意見を言わせたり、振り返りをさせたりします。

ネガティブな意見が出たら、それを受け止めつつ、少しでもポジティブな意味づけをして返してあげます。

小学校や中学校でよく行われるSST

小学校や中学校でよく行われるソーシャルスキルトレーニングは、次のとおりです。

  • あいさつ
  • 自己紹介
  • 話の聞き方・相槌の打ち方
  • 質問の仕方
  • 仲間の誘い方
  • 仲間の輪への入り方
  • 頼み方
  • 断り方
  • 問題が起こった時に対応を考える方法

いずれも学校やクラスで課題や問題になっている状況に基づいて、教師が指導案を作成することになります。

指導案のテンプレートは教育関係書籍に載っていますし、指導案の記載例を載せているサイトもあります。

まとめ

ソーシャルスキルトレーニング(SST)について紹介しました。

仕事柄、日常的に活用していますが、子どもへのSSTは独特の難しさと味わい深さがあり、いつも苦労しつつも楽しく取り組んでいます。

ソーシャルスキルトレーニングの技法や理論は、ペアレントトレーニングなど親支援の分野でも活用されており、家庭における子育てにも役立ちます。

子どもへの接し方や関わり方で悩んでいるパパママは、少しかじってみても良いのではないでしょうか。

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